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[MTT28-12] アミノ酸前駆体とアミノ酸によるホモキラルフィードバック機構(予察):どうやって、右と左の対称性を破り、増幅させるか?
キーワード:アミノ酸前駆体とアミノ酸、ホモキラルフィードバック機構
アミノ酸は、アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を保有する有機分子である。タンパク性アミノ酸の中心炭素のα-位には、水素(-H)がある。非タンパク性アミノ酸の中心炭素のα-位には、メチル基(-CH3)が付加している分子種も存在する。炭素は、原子価が4であるから、α-位にアミノ基、カルボキシル基ともう一つR-基が付加することにより、分子構造の多様性が生まれる。α-位の炭素は、鏡像異性の中心になり、D-体とL-体の光学異性アミノ酸が存在することになる。また、アミノ酸は、β-アラニンやγ-アミノ酪酸のような非タンパク性の分子構造も存在することから、地球物質中だけでなく、地球外物質中の起源や物質進化のプロセス研究においても常に注目される有機分子である。
さて、コイントスを考えた場合、表と裏の出る確率は、50:50である。これを無限回繰り返したらどうだろうか。やはり、「50.0:50.0」に収束する。ところが、生命が発生する以前の物質だけの世界(=非生命圏)では、ある時から「51:49」のように分子の対称性が破られた。この左右の対称性の破れは、何に起因するのか。炭素数2のグリシンを除くと、炭素数3のα-アラニンは、非生物的に生成するアミノ酸の中でもっとも存在量の多いキラルアミノ酸(潜在的にはアラニン前駆体を含む:Takano et al., 2007)である。ここでは、右と左の分子対称性(モレキュラーキラリティー)の視点から、アミノ酸前駆体とアミノ酸の水質相互作用によるホモキラルフィードバック機構の実験的検証について、議論してみたい。本研究の一部は、文部科学省(MEXT)の科学研究費補助金・新学術領域研究(No. 25108006)の助成によって行われた。
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[References]
Bassez, M-P., Takano, Y., and Ohkouchi, N. (2009) Organic analysis of peridotite rocks from Ashadze and Logatchev hydrothermal sites. International Journal of Molecular Sciences, 10, 2986-2998.
Bonner, W.A. (1991) The origin and amplification of biomolecular chirality. Origins of Life and Evolution of Biospheres, 21, 59-111.
Meierhenrich, U. (2008) Amino Acids and the Asymmetry of Life, Springer, 1-241.
Takano, Y., Takahashi, J., Kaneko, T., Marumo, K. and Kobayashi, K. (2007) Asymmetric synthesis of amino acid precursors in interstellar complex organics by circularly polarized light. Earth and Planetary Science Letters, 254, 106-117.
Takano, Y., Chikaraishi, Y., and Ohkouchi, N. (2010) Enantiomer-specific isotope analysis (ESIA) of D- and L-alanine: nitrogen isotopic hetero- and homogeneity by microbial process and chemical process. Earth, Life, and Isotopes. Kyoto University Press., pp. 387-402.
さて、コイントスを考えた場合、表と裏の出る確率は、50:50である。これを無限回繰り返したらどうだろうか。やはり、「50.0:50.0」に収束する。ところが、生命が発生する以前の物質だけの世界(=非生命圏)では、ある時から「51:49」のように分子の対称性が破られた。この左右の対称性の破れは、何に起因するのか。炭素数2のグリシンを除くと、炭素数3のα-アラニンは、非生物的に生成するアミノ酸の中でもっとも存在量の多いキラルアミノ酸(潜在的にはアラニン前駆体を含む:Takano et al., 2007)である。ここでは、右と左の分子対称性(モレキュラーキラリティー)の視点から、アミノ酸前駆体とアミノ酸の水質相互作用によるホモキラルフィードバック機構の実験的検証について、議論してみたい。本研究の一部は、文部科学省(MEXT)の科学研究費補助金・新学術領域研究(No. 25108006)の助成によって行われた。
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[References]
Bassez, M-P., Takano, Y., and Ohkouchi, N. (2009) Organic analysis of peridotite rocks from Ashadze and Logatchev hydrothermal sites. International Journal of Molecular Sciences, 10, 2986-2998.
Bonner, W.A. (1991) The origin and amplification of biomolecular chirality. Origins of Life and Evolution of Biospheres, 21, 59-111.
Meierhenrich, U. (2008) Amino Acids and the Asymmetry of Life, Springer, 1-241.
Takano, Y., Takahashi, J., Kaneko, T., Marumo, K. and Kobayashi, K. (2007) Asymmetric synthesis of amino acid precursors in interstellar complex organics by circularly polarized light. Earth and Planetary Science Letters, 254, 106-117.
Takano, Y., Chikaraishi, Y., and Ohkouchi, N. (2010) Enantiomer-specific isotope analysis (ESIA) of D- and L-alanine: nitrogen isotopic hetero- and homogeneity by microbial process and chemical process. Earth, Life, and Isotopes. Kyoto University Press., pp. 387-402.