17:15 〜 18:30
[MTT28-P02] レーザーアブレーションICP-MS/MSとコリジョン/リアクションセル用いたジルコン局所分析法の評価
キーワード:レーザーアブレーションICP質量分析法、ジルコン年代学、微量元素定量分析、コリジョン/リアクションセル
レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS)は固体試料の直接分析法であり、試料の前処理が簡便なことや高感度かつ迅速な分析が可能なことなどから、地球科学分野で広く利用されている分析手法である。しかし、この手法の持つ高いイオン化能は目的元素と同時にそれ以外の元素のイオン化も引き起こしてしまう。そのため化学的分離手法を用いて目的元素のみを単離することが可能な溶液試料導入法とは異なり、レーザーアブレーション試料導入法では同重体・多原子・二価イオンからの質量スペクトル干渉に対して慎重な対応が求められる。これらの干渉を避けるためにイオン源の状態調節や質量分解能を上げるなどの調整が通常行われるが、同時に感度が低下するという問題が避けられなかった。また、同重体による干渉については低減すら難しいという実態があった。そこで、本発表では二つの四重極型質量分離部(Q1, Q2)とコリジョン/リアクションセル(CRC)と呼ばれる装置を持つICP質量分析計を用いて、代表的なLA-ICP-MSのアプリケーションであるジルコンの年代測定および希土類元素元素濃度測定における質量スペクトル干渉の低減を試みた。
ジルコンのU-Th-Pb年代測定で測定される同位体のうち質量数204の鉛は非放射壊変起源であるためその精確な測定は年代測定の信頼性を高める上で重要である。しかしLA-ICP-MS法では質量数204の水銀も同時にイオン化されてしまうため同重体干渉が発生し、この干渉の排除は手法が登場して以来、大きな課題となっていた。本発表ではCRCに1 ml/min程度のアンモニアガスを流し水銀イオンと反応させることで、同重体干渉の低減を試みた。この際、アンモニアガスはジルコンに含まれる希土類元素のイオン(Ce+, Eu+, Yb+等)と反応して多原子イオンを作り鉛の同位体に干渉することが考えられる。そこでCRCの前に設置されたQ1で測定に関与する元素の同位体(Hg, Pb, Th, U)のみを通過させるように設定した。このような装置設定で年代値が既に報告されているジルコン標準試料(Plešovice, GJ-1)を年代測定したところ、確度・精度を維持したまま水銀の同重体干渉を100分の1以下に低減することができた。
希土類元素の多くはICP質量分析計内で周囲の酸素と結合し酸化物を生成する割合が高いことが一般に知られている。そのため、中-重希土類元素のピークに対し軽-中希土類元素の酸化物が質量スペクトル干渉を引き起こすことから、感度とのトレードオフとして酸化物の生成量を抑制したチューニング条件がしばしば使われる。本研究ではCRCに酸素ガスを流し故意に希土類元素酸化物イオンを作り出す通称マスシフトと呼ばれる手法でジルコン中の希土類元素濃度を測定した。マスシフト法では多原子・二価イオンの干渉をほぼ完全に排除可能なため、感度を最大化するチューニング条件での測定が可能であり、本研究では通常の測定条件(酸化物生成率<1%)と比べて約10倍の感度条件(酸化物生成率>100%)で測定を行ったところ、良い確度での定量結果が得られた。
以上より、CRCとLA-ICP-MS/MSを組み合わせることによってジルコンの年代測定・希土類元素定量分析において顕著な干渉の低減と共に感度の向上が達成可能であると考えられる。
ジルコンのU-Th-Pb年代測定で測定される同位体のうち質量数204の鉛は非放射壊変起源であるためその精確な測定は年代測定の信頼性を高める上で重要である。しかしLA-ICP-MS法では質量数204の水銀も同時にイオン化されてしまうため同重体干渉が発生し、この干渉の排除は手法が登場して以来、大きな課題となっていた。本発表ではCRCに1 ml/min程度のアンモニアガスを流し水銀イオンと反応させることで、同重体干渉の低減を試みた。この際、アンモニアガスはジルコンに含まれる希土類元素のイオン(Ce+, Eu+, Yb+等)と反応して多原子イオンを作り鉛の同位体に干渉することが考えられる。そこでCRCの前に設置されたQ1で測定に関与する元素の同位体(Hg, Pb, Th, U)のみを通過させるように設定した。このような装置設定で年代値が既に報告されているジルコン標準試料(Plešovice, GJ-1)を年代測定したところ、確度・精度を維持したまま水銀の同重体干渉を100分の1以下に低減することができた。
希土類元素の多くはICP質量分析計内で周囲の酸素と結合し酸化物を生成する割合が高いことが一般に知られている。そのため、中-重希土類元素のピークに対し軽-中希土類元素の酸化物が質量スペクトル干渉を引き起こすことから、感度とのトレードオフとして酸化物の生成量を抑制したチューニング条件がしばしば使われる。本研究ではCRCに酸素ガスを流し故意に希土類元素酸化物イオンを作り出す通称マスシフトと呼ばれる手法でジルコン中の希土類元素濃度を測定した。マスシフト法では多原子・二価イオンの干渉をほぼ完全に排除可能なため、感度を最大化するチューニング条件での測定が可能であり、本研究では通常の測定条件(酸化物生成率<1%)と比べて約10倍の感度条件(酸化物生成率>100%)で測定を行ったところ、良い確度での定量結果が得られた。
以上より、CRCとLA-ICP-MS/MSを組み合わせることによってジルコンの年代測定・希土類元素定量分析において顕著な干渉の低減と共に感度の向上が達成可能であると考えられる。