15:30 〜 15:45
[MTT30-01] 浅部地盤構造調査への統合物理探査の活用
★招待講演
キーワード:浅部、統合物理探査、S波速度、比抵抗、工学的評価
表層数10mまでの浅部の構造や物性は,これまでボーリングや直接的な地下掘削などの手段で検証されてきた.一方で浅部には風化表層や人工地層が分布し,小スケールの不均質構造が発達する.したがって特定の地点で実施されたボーリング調査などの結果は局所的な空間の構造しか反映しておらず,広域的空間の代表情報として使用できないことが多い.表層は開発行為の主対象領域であり,我々の生活基盤でもあることから施工時の安定性や自然災害に対する既存インフラ施設の安全性を評価することが求められる.表層部に広く張り巡らされた道路や河川堤防,上下水道などの社会インフラ施設は,高度経済成長期などに集中的に整備されてきたが近年老朽化・劣化が進行し,それらの維持管理および更新を如何に効率的に推進するかが社会的な課題となってきている.
物理探査は連続的2次元断面物性構造情報を提供できることから,社会インフラ施設を含めた浅部地盤調査に重要な役割を担うことが期待されている.ただしこの浅部物理探査には,従来の地下資源調査や地下構造調査分野に適用されていた物理探査に比べ,より信頼性が高く高解像度の断面を提供するとともに,表層の物性やインフラ施設の劣化度にかかわる工学的指標を提供することが求められる.たとえば河川堤防では,洪水時に漏水や浸食に耐え,また地震時にも大規模な損壊を発生しない耐震性を有しているかを点検診断することが,道路盛土の場合は施工不良によって沈下や空洞が発生していないか,また原地盤との境界部に地下水が集中していないかを点検診断することが求められる.これらの点検診断項目を,単一の物理探査手法で把握することはほぼ不可能である.いくつかの手法を組み合せて適用すればこれらを評価する可能性は高まるが,その場合コスト,作業性,探査深度,分解能等の要件を満たすとともに,評価技術として取得物性情報の工学的指標への変換過程の確立が必要とされる.
筆者らはこれまで,河川堤防に対してランドストリーマー表面波探査法と牽引式電気探査法を組み合わせて実施する統合物理探査技術の適用開発を進めてきた.評価技術に関しては,統合物理探査で得られる人工地層と自然地層のS波速度および比抵抗値と,浸透特性や粒度特性などの工学的物性との関連性を統計的に求め,加えて両者の関係を説明する粒子・間隙モデルを提案してきた.最近では道路舗装・盛土を対象として統合物理探査の適用研究を進めている.筆者らが統合物理探査と称しているのは,それが単にいくつかの探査手法を組み合わせたものではなく,探査結果から新たな空間物性情報を生産することを特徴としているからである.さらに,物性構造の再現性を向上させ信頼性の高い断面情報を提供するために,異なるステージでの再計測,検層や地盤試料試験の実施と試験データの対比も特徴とする.本講演では,河川堤防および道路盛土を対象とした統合物理探査の事例と要素探査手法の概要を紹介するとともに,探査結果からの工学的特性の評価とその過程について述べる.
物理探査は連続的2次元断面物性構造情報を提供できることから,社会インフラ施設を含めた浅部地盤調査に重要な役割を担うことが期待されている.ただしこの浅部物理探査には,従来の地下資源調査や地下構造調査分野に適用されていた物理探査に比べ,より信頼性が高く高解像度の断面を提供するとともに,表層の物性やインフラ施設の劣化度にかかわる工学的指標を提供することが求められる.たとえば河川堤防では,洪水時に漏水や浸食に耐え,また地震時にも大規模な損壊を発生しない耐震性を有しているかを点検診断することが,道路盛土の場合は施工不良によって沈下や空洞が発生していないか,また原地盤との境界部に地下水が集中していないかを点検診断することが求められる.これらの点検診断項目を,単一の物理探査手法で把握することはほぼ不可能である.いくつかの手法を組み合せて適用すればこれらを評価する可能性は高まるが,その場合コスト,作業性,探査深度,分解能等の要件を満たすとともに,評価技術として取得物性情報の工学的指標への変換過程の確立が必要とされる.
筆者らはこれまで,河川堤防に対してランドストリーマー表面波探査法と牽引式電気探査法を組み合わせて実施する統合物理探査技術の適用開発を進めてきた.評価技術に関しては,統合物理探査で得られる人工地層と自然地層のS波速度および比抵抗値と,浸透特性や粒度特性などの工学的物性との関連性を統計的に求め,加えて両者の関係を説明する粒子・間隙モデルを提案してきた.最近では道路舗装・盛土を対象として統合物理探査の適用研究を進めている.筆者らが統合物理探査と称しているのは,それが単にいくつかの探査手法を組み合わせたものではなく,探査結果から新たな空間物性情報を生産することを特徴としているからである.さらに,物性構造の再現性を向上させ信頼性の高い断面情報を提供するために,異なるステージでの再計測,検層や地盤試料試験の実施と試験データの対比も特徴とする.本講演では,河川堤防および道路盛土を対象とした統合物理探査の事例と要素探査手法の概要を紹介するとともに,探査結果からの工学的特性の評価とその過程について述べる.