日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT31] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2016年5月26日(木) 09:00 〜 10:30 202 (2F)

コンビーナ:*山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、新井 伸夫(名古屋大学減災連携研究センター)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、座長:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、新井 伸夫(名古屋大学減災連携研究センター)

10:00 〜 10:15

[MTT31-05] 電離圏擾乱による火山爆発スケール: ブルカノ式火山噴火に伴う空振とそれに伴う電離圏TEC擾乱の比較

*中島 悠貴1青木 陽介2西田 究2藤田 進悟1日置 幸介1 (1.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻地球惑星ダイナミクス講座、2.東京大学地震研究所)

キーワード:GNSS、GPS、火山、電離圏、地震

本講演では、2015年口永良部島火山噴火に伴う気圧振動とTEC (Total Electron Content; 電離圏全電子数) 擾乱の解析結果とその結果を利用して校正した電離圏擾乱から見た火山噴火のスケールの利用可能性について報告する。
ブルカノ式火山噴火による空振でもごく低い周波数のもの (〜0.01 Hz) は、上空約300 kmの電離圏中の電子を揺さぶることがある。Heki (2006, GRL) は、2004年の浅間山火山のブルカノ式噴火に伴う電離圏擾乱についてGNSS-TEC法によってはじめて調査し、爆発に伴うエネルギーを見積もった。我々は、このような電離圏擾乱について火山学的な観測量との関連を見出すため、その起源であるブルカノ式火山噴火に伴う空振との比較を試みた。
我々はまず、日本で起こった五つのブルカノ式火山噴火 (2004年浅間山、2009年桜島、2011年新燃岳 (2)、2015年口永良部島) に伴う擾乱の斜めTECの振幅をGIM (Global Ionospheric Maps) から得られる鉛直TECで規格化した値 (Fスケールと命名; 竜巻のスケールとは別物) と気象庁の火山解説資料の空振々幅とを比較した。その結果、相関係数0.5を得ている。
この結果をよりよいものとするために、2015年5月29日0:58UTに発生した口永良部島火山のブルカノ式噴火について、爆発時の波動の周波数成分について見直した。一般的に、火山爆発による空振は周期2–3秒が卓越することが知られている (坂井他, 2000, 験震時報) が、数十mHzより高い周波数を持つ気圧波動は電離圏へ到達するまでに減衰する (Blanc, 1984, Ann. Geophys.)。そのため、爆発による気圧波動の周波数成分が各々のブルカノ式噴火によってどの程度変動するのかを理解することで、電離圏擾乱からの爆発規模推定の誤差を考えることができる可能性がある。
今回、Fスケールとの比較で使った口永良部島における気象庁の新岳北東山麓観測所 (火口から北東約2.3 km; 最大振幅 62.2Pa以上) 及び本村東観測所 (北西2.8 km; 13.9 Pa) の大気振動観測機器は空振計 (ACO社 超低周波マイクロフォンTYPE7144・空振計TYPE3348) で、0.1–100 Hzの周波数特性を持っていた。それに対して、防災科学技術研究所が火山近傍で展開するV-netの観測点、七釜 (南東約1.7 km; 350 Pa)と古岳西 (南西約1.5 km; 280 Pa) では気圧計 (Vaisala社 PTB100) を使っている。サンプリング間隔は1 sec である。
TECの振動についても、1HzサンプリングのRINEXファイルを入手し、その波形の詳細について解析を進めている。こちらも鉛直TECへの変換や伝搬距離に応じた減衰を補正することで、スケールの改善を望めるはずである。