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[MZZ32-P03] 東京大学地球惑星科学専攻図書室保存書庫の貴重史料
キーワード:東京大学地球惑星科学専攻図書室、アーカイヴズ、東アジア
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻図書室の保存書庫には、1877 (明治10) 年開学以来の古い図書や地図類が保管され、手稿類と合わせて貴重なアーカイヴズを形成している。これらは主として旧地学科に属した地質学、鉱物学、地理学教室から受け継がれたものである。残念ながら諸事情で、どんな本が保管されているか、東京大学 OPAC にすべてが掲載されているわけではないので、全容は知られていない。近いうちに行われる新図書館の開設に向けて、保存書庫の調査が進んでいるので、その一部を紹介したい。
保存書庫の利用は現在月1回、第4木曜日に限られている。最も参照されているのは、過去の卒業生の進論、卒論、修論、博論の手稿であり、たとえば第1回の卒業生である小藤文次郎の卒論は一見の価値がある。次に利用されているのは、明治期発行の雑誌類である。
あまり利用されていないが、大量に保管され保存のよいのは、歴代教授が集めた論文抜き刷りを製本化した文庫で、小藤文次郎 (1856–1935)、横山又次郎 (1860– 1942)、神保小虎 (1867–1924)、小沢儀明 (1899–1929)、加藤武夫 (1883–1949)、大塚弥之助 (1903–1950) などがある。特に小藤文庫が圧倒的な量を占めている。神保文庫はロシア語文献を含み、小澤文庫は有孔虫に関する文庫が分けてある。原田豊吉 (1861–1894) や山川戈登 (1885–1910) のものは文庫としてまとまってはいないが、記念印があるのでそれとわかる。小林貞一 (1901–1996) のものも網羅的ではないが存在する。過去の地質学者・古生物学者の研究の詳細を知るにはもってこいの史料といえる。
洋書の古典も Georges Cuvier (1769–1832) の『四足獣化石』(1836)、William Buckland (1784–1856) の『ブリッジウォーター論集』(1832)、Louis Agassiz (1807–1873) の『魚化石』(1833)、Alexandre Brongniart (1770–1847) の『植物化石』(1828)、Charles Lyell (1797–1875) の『地質学原理』(1840)、Friedrich August von Quenstedt (1809–1889) の『ジュラ系化石』(1858)、Othenio Abel (1875–1946) の『パレオバイオロジー』(1912) など、多くの図版を含んだ重要な書籍を擁している。地質学に関する古書は京都大学理学部中央図書室保管のものが知られるが、東京大学にも総合図書館所蔵のものも合わせるとかなりの量が保存されている。
本アーカイヴズの重要性と今後の研究上の利用可能性について示唆しておきたい。
第一に、19世紀後半以降の東アジアにおける地質学研究の実態を記録するまたとない史料群であり、非西欧圏における地質学の始まりを刻印している。
第二に、歴代教授の「文庫」の存在は、単に当時の研究の状況を知るだけでなく、国際的な科学者のネットワークを復元する科学社会学的な研究に役立つだろう。
第三に、旧植民地の地図類や関連図書の存在がある。これらはまだ詳細が明らかでない部分もあるが、戦前の地学史研究の欠を補う可能性を秘めている。
保存書庫の利用は現在月1回、第4木曜日に限られている。最も参照されているのは、過去の卒業生の進論、卒論、修論、博論の手稿であり、たとえば第1回の卒業生である小藤文次郎の卒論は一見の価値がある。次に利用されているのは、明治期発行の雑誌類である。
あまり利用されていないが、大量に保管され保存のよいのは、歴代教授が集めた論文抜き刷りを製本化した文庫で、小藤文次郎 (1856–1935)、横山又次郎 (1860– 1942)、神保小虎 (1867–1924)、小沢儀明 (1899–1929)、加藤武夫 (1883–1949)、大塚弥之助 (1903–1950) などがある。特に小藤文庫が圧倒的な量を占めている。神保文庫はロシア語文献を含み、小澤文庫は有孔虫に関する文庫が分けてある。原田豊吉 (1861–1894) や山川戈登 (1885–1910) のものは文庫としてまとまってはいないが、記念印があるのでそれとわかる。小林貞一 (1901–1996) のものも網羅的ではないが存在する。過去の地質学者・古生物学者の研究の詳細を知るにはもってこいの史料といえる。
洋書の古典も Georges Cuvier (1769–1832) の『四足獣化石』(1836)、William Buckland (1784–1856) の『ブリッジウォーター論集』(1832)、Louis Agassiz (1807–1873) の『魚化石』(1833)、Alexandre Brongniart (1770–1847) の『植物化石』(1828)、Charles Lyell (1797–1875) の『地質学原理』(1840)、Friedrich August von Quenstedt (1809–1889) の『ジュラ系化石』(1858)、Othenio Abel (1875–1946) の『パレオバイオロジー』(1912) など、多くの図版を含んだ重要な書籍を擁している。地質学に関する古書は京都大学理学部中央図書室保管のものが知られるが、東京大学にも総合図書館所蔵のものも合わせるとかなりの量が保存されている。
本アーカイヴズの重要性と今後の研究上の利用可能性について示唆しておきたい。
第一に、19世紀後半以降の東アジアにおける地質学研究の実態を記録するまたとない史料群であり、非西欧圏における地質学の始まりを刻印している。
第二に、歴代教授の「文庫」の存在は、単に当時の研究の状況を知るだけでなく、国際的な科学者のネットワークを復元する科学社会学的な研究に役立つだろう。
第三に、旧植民地の地図類や関連図書の存在がある。これらはまだ詳細が明らかでない部分もあるが、戦前の地学史研究の欠を補う可能性を秘めている。