14:25 〜 14:45
[O01-02] オリエンテーリングと地図学習
★招待講演
キーワード:地図学習、フィールドワーク、地図と現地の照合、オリエンテーリング、能動的学習
東日本大震災、伊豆大島豪雨、広島土砂災害、御嶽山噴火などの変災や日常的な道案内、レクリエーション時における遭難防止など現代社会のあらゆる活動において、空間の把握とその中での移動(ナヴィゲーション)は必須である。教育においてこれらは地図学習において大縮尺の地図の学習として位置づけられている。この学習の基礎は、実際の風景と地図とを照合させるという「地図と現地の照合」にある。このスキルは人間にとって生きる力そのものである。このスキルの学習にはフィールドワークが必要である。フィールドワークの内容は多岐にわたるが、まず地図を見て自分がどこにいるのかを確認することから始まる。「地図と現地を照合」はフィールドワークの学習に際しても基礎となる。しかし、いずれの側からの学習についての蓄積は少ない。
「地図と現地との照合」の学習には、学習者による能動的な学習が必要である。そこで、この学習方法としてオリエンテーリングを提示する。オリエンテーリングは地図とコンパスを用いてスタートから地図上に示されたいくつかの地点を指定された順序で経由しフィニッシュまでの時間を競う野外スポーツである。体力的な部分と同等に地図の読図能力が要求される。19世紀後半に北欧で始ったこのスポーツは世界選手権大会などチャンピオンシップスポーツであると同時に、大衆スポーツとしても欧州を中心に盛んに行われている。オリエンテーリング競技での読図の技術は、競技だけのものではなく、日常の地図の実用的な利用方法でもある。競技者は、地図と現地とを絶え間なく照合しながら現在地を把握し目的の地点への到達を競いあう。これは、「地図と現地との照合」の学習と合致する。
当初オリエンテーリングは「森のスポーツ」として山林での実施が主であった。教育においても日本ではオリエンテーリングは野外活動施設を中心に数多く実施されてきた。その後、オリエンテーリングは市街地や公園のような場所での競技を想定した地図図式や競技規則も制定され、地理情報技術の進展とIT技術の進歩による計時や通過証明の自動化なども相まって、いろいろな環境での競技が可能となった。そこで、学校敷地にて専用の地図を作成し適切なコースを設定し、専用の計時計測機材を利用して、通常の50分の地理授業で、教員1名生徒40名程度にてオリエンテーリング実習を行った。学校敷地での実施は、まずは慣れ親しんだ環境にて基礎基本を習得する、という考え方である。
学校敷地といえども精細に表現された地図を使うことは生徒にとっては初めてである。場所、人、時間が制約された授業の中で、学習効果を上げるには、競技形式といった明確な形態が必要である。時に緊急時には“あせり”も生じるように、こうした競技形式で行うことで、現実に即した迫真の読図も要求されということでの意義も大きい。このようなアクティビティーを授業で行うことで、座学では得られない生徒の学習活動への意欲増大につながる。また、個人で行うので、個々の判断が要求される。学習は生徒たち自身にゆだねられ、アクティブラーニングそのものである。実習は生徒にとって好評である。自動的に通過証明や経過時間が計測され、その結果が速やかに提示されることで、生徒はテーマパークのアトラクションのような楽しみを得ているのかもしれない。実習後、生徒達は車座になって、実習の様子を検討しあう。話題の中心は地図読図であり、重要性を語る。生徒達は地図読図能力の向上を実感し、日常生活への利用や見知らぬ土地での応用、災害時におけるの心得など汎用性・応用性を伴った感想を述べている。
地図を取り巻く社会的環境は現在大きく変化している。地図学習を支えてきた国土地理院の地形図は大きく変化しており、地図学習は転機を迎えている。学習内容に応じた地図を作製するという観点でGISの考え方にも合致している。国際オリエンテーリング連盟による地図図式は世界共通であるということも注目である。オリエンテーリングは地図を扱うことにより地理学的興味の対象そのものでもあり、生涯学習的な視点で捉えることもできよう。現代社会は、複雑化しており、単独の教科・科目では解決出来ない問題も少なくない。走るということから体育と、情報機材の活用から情報と、他教科・他科目とも大いに関連する。通常の授業での実習は遠足・宿泊研修・修学旅行など校外での学習活動に際しての事前学習として利用できよう。獲得したスキルは、海外のように見知らぬ土地・慣れない環境への適応にも有効であり、グローバル人材育成においても欠かせない。ヨーロッパ諸国では教育課程に位置付けられ、国際地図学協会の会議ではオリエンテーリングセッションが設けられている。オリエンテーリングを地理学的・地理教育的に捉えることはグローバルな視点からも不可欠でもある。
「地図と現地との照合」の学習には、学習者による能動的な学習が必要である。そこで、この学習方法としてオリエンテーリングを提示する。オリエンテーリングは地図とコンパスを用いてスタートから地図上に示されたいくつかの地点を指定された順序で経由しフィニッシュまでの時間を競う野外スポーツである。体力的な部分と同等に地図の読図能力が要求される。19世紀後半に北欧で始ったこのスポーツは世界選手権大会などチャンピオンシップスポーツであると同時に、大衆スポーツとしても欧州を中心に盛んに行われている。オリエンテーリング競技での読図の技術は、競技だけのものではなく、日常の地図の実用的な利用方法でもある。競技者は、地図と現地とを絶え間なく照合しながら現在地を把握し目的の地点への到達を競いあう。これは、「地図と現地との照合」の学習と合致する。
当初オリエンテーリングは「森のスポーツ」として山林での実施が主であった。教育においても日本ではオリエンテーリングは野外活動施設を中心に数多く実施されてきた。その後、オリエンテーリングは市街地や公園のような場所での競技を想定した地図図式や競技規則も制定され、地理情報技術の進展とIT技術の進歩による計時や通過証明の自動化なども相まって、いろいろな環境での競技が可能となった。そこで、学校敷地にて専用の地図を作成し適切なコースを設定し、専用の計時計測機材を利用して、通常の50分の地理授業で、教員1名生徒40名程度にてオリエンテーリング実習を行った。学校敷地での実施は、まずは慣れ親しんだ環境にて基礎基本を習得する、という考え方である。
学校敷地といえども精細に表現された地図を使うことは生徒にとっては初めてである。場所、人、時間が制約された授業の中で、学習効果を上げるには、競技形式といった明確な形態が必要である。時に緊急時には“あせり”も生じるように、こうした競技形式で行うことで、現実に即した迫真の読図も要求されということでの意義も大きい。このようなアクティビティーを授業で行うことで、座学では得られない生徒の学習活動への意欲増大につながる。また、個人で行うので、個々の判断が要求される。学習は生徒たち自身にゆだねられ、アクティブラーニングそのものである。実習は生徒にとって好評である。自動的に通過証明や経過時間が計測され、その結果が速やかに提示されることで、生徒はテーマパークのアトラクションのような楽しみを得ているのかもしれない。実習後、生徒達は車座になって、実習の様子を検討しあう。話題の中心は地図読図であり、重要性を語る。生徒達は地図読図能力の向上を実感し、日常生活への利用や見知らぬ土地での応用、災害時におけるの心得など汎用性・応用性を伴った感想を述べている。
地図を取り巻く社会的環境は現在大きく変化している。地図学習を支えてきた国土地理院の地形図は大きく変化しており、地図学習は転機を迎えている。学習内容に応じた地図を作製するという観点でGISの考え方にも合致している。国際オリエンテーリング連盟による地図図式は世界共通であるということも注目である。オリエンテーリングは地図を扱うことにより地理学的興味の対象そのものでもあり、生涯学習的な視点で捉えることもできよう。現代社会は、複雑化しており、単独の教科・科目では解決出来ない問題も少なくない。走るということから体育と、情報機材の活用から情報と、他教科・他科目とも大いに関連する。通常の授業での実習は遠足・宿泊研修・修学旅行など校外での学習活動に際しての事前学習として利用できよう。獲得したスキルは、海外のように見知らぬ土地・慣れない環境への適応にも有効であり、グローバル人材育成においても欠かせない。ヨーロッパ諸国では教育課程に位置付けられ、国際地図学協会の会議ではオリエンテーリングセッションが設けられている。オリエンテーリングを地理学的・地理教育的に捉えることはグローバルな視点からも不可欠でもある。