日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-02] 高校生によるポスター発表

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O02-P10] 福井地震断層の探究Ⅳ

*石田 成輝1、*小角 亮佑1、*清水 天暉1、*藤田 寛和1、*本田 瑛之介1 (1.福井県立藤島高等学校)

キーワード:震源決定、S波スプリッティング、クラック、トラップ波

研究の概要
私たちは、福井平野一帯の地下構造の推定を目標として、福井平野東縁断層帯について研究している。この研究は先輩たちから受け継いできたものであり、私たちで4代目に当たる。
福井平野東縁断層帯は主部と西部から成り、主部は加賀沖から松岡を経由して美山まで、西部は三国沖からあわら・坂井を経由して福井市まで南北に延びる断層帯である。特に西部は福井地震を引き起こしたことで知られる。本研究では断層帯周辺に位置する5校(藤島高校、三国高校、丸岡高校、金津高校、坂井高校)に精密地震計を設置し、地震波形データを収集・解析した。うち、金津高校と坂井高校が断層帯の中に位置する。
私たちの研究内容は主に以下の3つである。

波形データを解析することによりP波およびS波の着震時刻を調べ、震源決定を行った。
波形データから作成したホドグラフを利用してS波の最初の振動方向を調べ、S波偏向異方性を調べた。
断層帯の南北延長上で発生した地震においてトラップ波と思われる波形を観測した。

以上のことを基にして、福井平野の地下構造を推定した。

結果と考察
震源決定(図)
54個の分布図である。うち32個は今年度私たちが決定したものである。震源は、マグニチュード別に色分けして示している。福井平野東縁断層帯で福井地震の余震が発生していることがわかる。

S波の最初の振動方向について
岩盤の割れ目のことをクラックと呼び、一般に断層に雁行して分布する。開口クラックをS波が通過すると、岩盤に隙間が存在することによってクラック面に対して垂直な成分の波が伝わりづらくなり、地表の観測点ではクラック面に対して平行するS波の成分が先に記録される。一方、閉口クラックを地震波が通過すると、岩盤同士の摩擦によってS波のクラック面に対し平行な成分が伝わりづらくなり、観測点ではクラック面に対し垂直なS波の成分が先に記録される。この解析では、S波のスプリッティングを調べることにより、地下のクラックについて推定することを目的としている。
解析に使用した地震は、2014年12月21日から2015年11月29日までに起きた地震のうち、5観測点すべてでノイズの少なかった14の地震である。
結果、
○金津高校では東西方向に偏っていた。
○坂井高校では多くが北西-南東方向だったが、東西方向もいくつか見られた。
○藤島高校・丸岡高校では北西-南東方向に偏っていた。
○三国高校では偏りが見られなかった。
の特徴が分かった。
これらのことから、金津では南北方向の閉口クラックが発達しており、坂井でも同様のものが小規模に発達していると推測された。
また、福井平野東縁断層帯の主圧力軸方向が北西-南東方向であることから、藤島高校と丸岡高校は地下応力の影響を強く受けていると考えている。

3.トラップ波について
断層破砕帯内を地震波が通過すると、内部で地震波が多重反射することにより地上の観測点でS波の着震後に顕著な後続波が観察されることがある。この後続波はトラップ波と呼ばれる。今回は観測網周辺で発生した、比較的規模の大きな3つの地震について波形を考察した。

○2015年9月6日発生、石川県西方沖震央、M4.2の地震
震央は福井平野東縁断層帯北方延長上である。この地震では坂井高校でS波着震後にトラップ波と思われる顕著な後続波が観測された。なお、金津高校は機器トラブルにより欠測。
○2015年10月29日発生、国見震央、M3.5の地震
震央は福井平野東縁断層帯の西に位置する。この地震では顕著な後続波はなかった。
○2015年11月29日発生、池田震央、M2.9の地震
震央は福井平野東縁断層帯の南方延長上に位置する。この地震では坂井高校と金津高校でS波着震後にトラップ波と思われる顕著な後続波を観測された。

これらのことにより、坂井と金津は断層破砕帯の中に位置していると推測される。

まとめ
福井平野東縁断層帯北部の金津・坂井地域では南北方向にクラックが発達しており、また主部と西部の間は断層破砕帯である可能性が高いと推測される。
ただし、より精度の高い考察のためには今後も継続的にデータを蓄積していくことが必要である。

謝辞
本研究では、全般的指導に福井高専の岡本拓夫教授、Work-Station環境の構築に福井大学大学院工学研究科の谷口渓さん、震源決定の指導等に福井大学教育地域科学部の松原澄さんのご協力をいただきました。厚く御礼申し上げます。