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[O02-P14] 2015年9月9日に関東地方に被害をもたらした記録的大雨の検証
キーワード:関東東北豪雨、南関東、降水強度が強い状態が長時間継続する条件
本研究では、2015年9月9日に起こった集中豪雨の検証をする。この大雨によってもたらされた災害は「関東東北豪雨」と呼ばれている。この災害の原因となったのは、台風18号である。台風18号は、同年9月7日に日本の南海上で発生し、ほぼ真北に向かって進み、9月9日に愛知県知多半島に上陸、日本列島を北北西の方向に縦断した。愛知県・岐阜県・福井県・石川県を通過し、同日21時に日本海の海上で温帯低気圧に変わった。 以下、気象庁が設置しているアメダス観測点で得られたデータに基づいて記述していく。関東地方の北部に位置する栃木県の五十里(いかり)では、9月10日の24時間に551.0mm、1時間に59.5mm(3時~4時)もの雨が降った。その結果、鬼怒川の堤防の決壊などが起こり、栃木県内で死者3名・負傷者5名・家屋の全壊23棟・半壊25棟・一部破損76棟・床上浸水2611件・床下浸水3376件が発生し、東武鬼怒川線・日光線とJR常磐線が運休になった。しかし、本研究ではあえて被害が北関東(栃木県)比べて少なかった南関東(東京都)に注目し、降水分布や被害状況を、北関東と比較した。 東京都では9月9日に、青梅(東経139度18.7分)で13時~14時の間に35.0mmの雨を観測した。青梅よりも東に位置する東京(東経139度45.0分)では、同日の21時~22時の間に18.5mmの雨を観測している。よって、南関東では降水域は、降水強度がだんだん弱まりながら、東に移動していったと検証される。 一方、青梅のほぼ真北に位置する栃木県足尾(東経139度26.9分)では、同日の15時~16時の間38.0mmの雨を観測した。東京のほぼ真北に位置する前述した五十里(東経139度41.7分)では、同日の21時~22時の間51.0mmの雨を観測している。よって、北関東では降水域は、降水強度が南関東ほど弱まらずに東に移動していると検証される。 以上で記述した南関東および北関東での大雨をもたらした雨雲は、日本気象協会による雨雲レーダーを見ると、南北に長く伸びていると検証できる。北関東では、長時間にわたって降水強度を保っていた。雨雲が単体ではなく、たくさんの雨雲が連続的に発生していたと推測される。一方南関東では、降水強度が強い状態が長時間継続する条件が整わなかったと考えられる。その理由として、9月9日には台風18号の進行方向に向かって東側に位置していた関東地方には、南東寄りの風が吹き込んでいた。栃木県と群馬県の間には、足尾山地(標高1500m以上を有する)が連なり、それに台風18号からの温かく湿った暖かい空気がぶつかり、雨雲を発生・発達させた。つまり北関東では、長時間にわたって、湿った暖かい空気が山脈にぶつかり続け、雨雲が連続的に発生した。一方、南関東では、このような上昇気流が長時間継続する条件がそろわなかった。