日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O02-P25] Sprite ~時間の推移における光度=エネルギーの変化~

*桐山 良太1、*戸田 康介1住田 匠 (1.愛知県立一宮高校)

キーワード:スプライト、インターレース除去、フラット補正、ポグソンの式、H-R図、太陽定数

スプライトとは、 1989年にアメリカで発見された『落雷が発生する際にその上空の高度40~90kmの高層大気中で発生する一瞬の発光現象』であり、最も明るい部分は、天の川よりも明るいとされている。また、スプライトは妖精のように現れることから英語で「妖精」という意味を持ち、肉眼では赤色やオレンジ色に見えるため「レッドスプライト」とも呼ばれる。その中でも「キャロットスプライト」や「カラム状スプライト」など多くの種類がある。
一宮高校では 2004年度から高感度モノクロビデオカメラWatec100NとUFOCapture(ビデオデータを常時メモリ上で監視して、変化を検出した時、その前後それぞれ1秒の合計2秒を記録するソフト)を使用した観測、研究を継続しており、2014年度から焦点距離の異なる8mmの広角レンズと25mmの望遠レンズの2種類のレンズを用いた観測を行ってきた。今年度は、時間の推移におけるエネルギーの変化に重点を置き、1イベントで最大1/12秒間の光度変化を研究している。
まず、スプライトのエネルギー量を求めるには、画像内の他の天体の等級と比較すればよいと考え、ステラナビゲーター(世界中のあらゆる地点の、任意の日時の星空を自由にシミュレーションするソフト)で天体の等級を特定した。ここで、光度のカウント値が飽和していないこぐま座ε星(4.2等級)を選んだ。
恒星が光り続けるのに対して、スプライトを観測できる時間は非常に短いためビデオカメラの30(fps)の1枚をGIMP(フリー画像処理ソフト)を用いてさらに前半と後半の2枚に分けた。この処理がインターレース除去であり、それによりスプライトの光度変化をより詳細である60(fps)として見ることができるようになった。
そして、インターレース除去を行った5枚(1/60×5=1/12秒間)の画像をすばる画像処理ソフト「マカリ」を用いて、それぞれの画像の左上端を(1,1)、右下端を(640,480)となるように水平方向をx軸、鉛直方向をy軸として、光度を0~255の256段階で表した。
しかし、レンズには画像の中心に近づくにつれて光度が大きくなる周辺減光という性質があるため、同じレンズで周辺減光成分を撮影した画像で割るフラット補正を行い、バックグラウンドの値を引くことにより、スプライトの真の光度の値を求めた。
その値をポグソンの式に代入して、スプライトの光度を等級(mag/□°)として表した結果、スプライトの多くの部分で天の川の等級より小さい値となったので、スプライトは天の川より明るいということが証明できた。
また、B-Vを横軸、絶対等級を縦軸に持つH-R図によりこぐま座ε星の絶対等級を求め、太陽定数をもとにしてスプライトとそれぞれの距離の比からエネルギーを比較すると、一部分ではあるがスプライトが持つ総エネルギー量を求めることができた。