日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O02-P55] 「ひかりのまち函館」で星空マップをつくる

*岡田 結衣1花田 愛海1 (1.遺愛女子中学校・高等学校)

キーワード:夜空の明るさ

1.はじめに
私たちのクラブは2011年から愛知県立一宮高校の「コアSSH・全国一斉夜空の明るさ調査」に参加して、スカイクオリティメータ―(SQML、SQMLE)を用いた夜空の明るさ調査に取り組んできた。2015年7月には国際ひかり年にちなんで、今までの調査結果の概要と函館周辺の星空が見えやすい地点を掲載した「函館周辺星空マップ」を、市内のイラストレーターの方のご協力により作成し、はこだて国際科学祭をはじめ、校内・市内のイベントで配布した。2015年まで5年間の継続観測から函館周辺の夜空の明るさについてまとめた。
2.観測方法
(1)定点観測 市内と周辺の3か所~6か所でSQMLによる定点観測を行った。月明かりのない時期の、薄明終了後1時間程度~22時までに、雲量を記録し各定点で天頂に向けて5回スイッチを押し、中央値を求めた。また、学校の体育館テラスに設置したSQMLEで5分ごとの自動観測を行い、10分ごとの変化率を求め、定点の値はこれをもとに21時に補正した。
(2)多点観測 2012年10月には40台のSQMLEをお借りし、観測協力者を募り多点観測を行った。約10日間の観測の結果から、天候がよい日の値を抜き出し、21時の値に補正して、5万分の1地形図上にプロットした。
(3)移動観測 天候のよい日を選んで、学校からの帰りや休日などに各定点間で移動観測を行った。天頂に向けて3回スイッチを押し中央値をもとめ、時間変化率をもとに21時の値に補正した。2012年から2015年までに26回の移動観測を行い約280点のデータを得た。
(4)眼視観測 各定点で観測時に天頂付近の星座を季節ごとに決め、(春:しし、かんむり 夏:こと 秋:ペガスス 冬:オリオン)最微光星等級を調べて記録した。
3.結果
(1)各定点の値(雲量0) 積雪期、黄砂飛来時期、spm・pm2.5の浮遊物質濃度が高い時期以外では学校のLEの値はほぼ18~18.5等、七飯は19.5等~19.9等が多く観測されている。各定点のデータを同様に整理し、これに多点観測、移動観測の結果を加えて函館周辺の夜空の明るさを0.5等ごとに分けたマップの基礎を作成した。
(2)眼視観測 定点観測・移動観測で行った眼視観測の結果を最微光星等級ごとにまとめ、その最低値をもとに相関を求めた。個人差が大きく、各地の夜空の明るさの違いの影響をうけるためばらつくが一定の関係がみられる。
(3)函館周辺星空マップの作製 定点の観測結果に移動観測の結果を加えて作成した 夜空の明るさ区域マップをもとに、市内のイラストレーター、三上いすずさんの協力を得て「函館周辺星空マップ」を作成した。マップでは夜空の等級ではなく「星の見え方のちがい」で区域を表し、眼視観測結果を参考に夏の大三角付近がどの程度見えるかモデル図を作成した。
4.考察
(1)函館の夜空の明るさの特徴 他の都市と比較すると函館は天の川が見える地域までの距離が短く、市内でも星がよく見える。
(2)積雪期の変化 積雪期に夜空が明るくなる原因について考察するために暗室に雪を入れてライトを照らしSQML、照度計で高度・方位ごとの明るさを測る実験を行った。その結果、雪が光を散乱反射し特に天頂を明るくすることがわかった。しかし、積雪期でも無雪期と変わらない値が出る結果が得られる場合もあることから、雪明り以外に上空の大気の状態が関係している可能性も考えられる。
(2)エアロゾルの影響 spm、pm2.5濃度、地上での相対湿度とSQMLEによる夜空の明るさの相関を求めた。4-6月の黄砂飛来時期や10月にspm、pm2.5濃度が高くなる時期は値が0.2~0.7明るくなるが積雪期には相関が見られなかった。しかし、湿度と夜空の明るさの値には、季節ごとに弱い相関がある。
5.まとめ
函館は夜景で有名だが夜景も星も美しくみえる。冬の夜空の明るさは雪明りと上空の大気の状態の影響を受けている。
6.今後の課題
デジタルカメラによる測光にも取り組み始めているが、測光結果にばらつきが大きく今後精度を上げ検討材料に加えたい。