14:45 〜 15:15
[O04-03] ゆざわジオパークの見えない火山の恵み
★招待講演
キーワード:ジオパーク、ジオツーリズム、ゆざわジオパーク
ゆざわジオパークは秋田県の最南東部にある湯沢市全域をジオパークのエリアとしており、山形・宮城の両県に隣接している。東方の奥羽山脈と西方の出羽丘陵に囲まれた横手盆地を貫流する雄物川と、その支流である皆瀬川、役内川、高松川沿いに豊かな水田地域が広がっている。かつて湯沢は銀山で栄えており、全国から多くの人が銀山に働きに来ていた。その時に大量に需要が生じた酒は、豊富な米や湧水があることから発展し、今も湯沢の産業として残っている。更に湯沢は地熱地帯でもあり国内有数の地熱発電所があるほか、豊富な温泉群にも恵まれている。日本海と対馬海流の影響で、特別豪雪地帯に指定されるほどの降雪がある中、人々はそれに負けず、土地の特徴を上手く利用しながら生きてきた。キーワードは「見えない火山」である。発表では見えない火山の恵みやそれらを利用した産業について、ゆざわジオパークの四季と絡めながら紹介する。
雪解けの春、ゆざわジオパーク全体を覆っていた雪が融けて大量の水となる。豊富な水はゆざわジオパークの様々な所を通りながら川を流れ下るが、その支流の一つに皆瀬川がある。皆瀬川は高低差60mの小安峡を流れており、その小安峡の始まりのところに不動滝がある。この周辺の岩石は、温泉の成分から石英が析出することによって硬化している。硬化作用が先行していた部分では、河川による浸食速度が遅くなり渓谷の形成が妨げられた。温泉の噴出場所は移動しており、現在は渓谷となった小安峡の岩壁から熱水が吹き出す様子を観察でき、地球から湧き出す地熱の力を実感できる。地下のマグマの力を実感できる場所は他にもあり、もう一つ川原毛地獄を挙げることができる。ここでは硫化水素を含んだ火山性のガスが山肌から噴出しており、周囲は熱水変質のため白色の粘土鉱物に変化している。これら温泉や噴気は地下のマグマによって温められた熱水であるが、現在ゆざわジオパークには活発に活動している火山はない。しかし約20万年前までは活発な火山活動が起こっていたと考えられており(高島他、1999)、大規模な地形の改変も起こった。その一つが木地山高原の湖沼群である。これらは大井上(1903)により調査が行われており、火山活動に伴う成因が示唆された。異なる標高の窪地に沼が形成されており、階段状に沼が分布している。その中の一つ苔沼は標高約580m高原に位置し、夏になると緑色の高層性ミズゴケが湖面のほとんどを覆う。ハッチョウトンボやイトトンボ類も生息しており、高原湿地帯の生態系を観察できる。苔沼の後方に見える山は兜山と呼ばれ、柱状節理でできた山である。遠くからでも山の側面に露出する柱状節理を観察することができ、秋には紅葉も相まって悠々とした姿を見ることができる。火山噴出物は他にもゆざわジオパークの大地を覆っており、中でも院内凝灰岩は石材として江戸時代から使われてきた。耐火、耐水に優れており、酒蔵や米蔵などにも使用されている。院内凝灰岩は過去の火山噴火により形成され、直径6kmのカルデラを埋めるように分布している。かつて石材を切り出していた石切り場は現在使われていないが、当時の作業風景が残されており観察することができる。冬になると、多くのジオサイトは雪に閉ざされ、田畑も雪に覆われてしまう。しかし、暖かい温泉は冬も変わらず湧き出ており、それを利用した三つ葉やトマトの通年栽培がおこなわれている。
このように、ゆざわジオパークでは火山の恵みを上手に活用して人々が生活してきた。火山というと大規模な噴火や災害が注目されがちだが、それだけが『火山』ではない。本発表によって、人々の生活やそれぞれの季節に溶け込んだ見えない火山の恩恵を感じてもらいたい。
雪解けの春、ゆざわジオパーク全体を覆っていた雪が融けて大量の水となる。豊富な水はゆざわジオパークの様々な所を通りながら川を流れ下るが、その支流の一つに皆瀬川がある。皆瀬川は高低差60mの小安峡を流れており、その小安峡の始まりのところに不動滝がある。この周辺の岩石は、温泉の成分から石英が析出することによって硬化している。硬化作用が先行していた部分では、河川による浸食速度が遅くなり渓谷の形成が妨げられた。温泉の噴出場所は移動しており、現在は渓谷となった小安峡の岩壁から熱水が吹き出す様子を観察でき、地球から湧き出す地熱の力を実感できる。地下のマグマの力を実感できる場所は他にもあり、もう一つ川原毛地獄を挙げることができる。ここでは硫化水素を含んだ火山性のガスが山肌から噴出しており、周囲は熱水変質のため白色の粘土鉱物に変化している。これら温泉や噴気は地下のマグマによって温められた熱水であるが、現在ゆざわジオパークには活発に活動している火山はない。しかし約20万年前までは活発な火山活動が起こっていたと考えられており(高島他、1999)、大規模な地形の改変も起こった。その一つが木地山高原の湖沼群である。これらは大井上(1903)により調査が行われており、火山活動に伴う成因が示唆された。異なる標高の窪地に沼が形成されており、階段状に沼が分布している。その中の一つ苔沼は標高約580m高原に位置し、夏になると緑色の高層性ミズゴケが湖面のほとんどを覆う。ハッチョウトンボやイトトンボ類も生息しており、高原湿地帯の生態系を観察できる。苔沼の後方に見える山は兜山と呼ばれ、柱状節理でできた山である。遠くからでも山の側面に露出する柱状節理を観察することができ、秋には紅葉も相まって悠々とした姿を見ることができる。火山噴出物は他にもゆざわジオパークの大地を覆っており、中でも院内凝灰岩は石材として江戸時代から使われてきた。耐火、耐水に優れており、酒蔵や米蔵などにも使用されている。院内凝灰岩は過去の火山噴火により形成され、直径6kmのカルデラを埋めるように分布している。かつて石材を切り出していた石切り場は現在使われていないが、当時の作業風景が残されており観察することができる。冬になると、多くのジオサイトは雪に閉ざされ、田畑も雪に覆われてしまう。しかし、暖かい温泉は冬も変わらず湧き出ており、それを利用した三つ葉やトマトの通年栽培がおこなわれている。
このように、ゆざわジオパークでは火山の恵みを上手に活用して人々が生活してきた。火山というと大規模な噴火や災害が注目されがちだが、それだけが『火山』ではない。本発表によって、人々の生活やそれぞれの季節に溶け込んだ見えない火山の恩恵を感じてもらいたい。