日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-04] ジオパークへ行こう

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、座長:渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

15:30 〜 16:00

[O04-04] 海と川が創った銚子ジオパークを探検しよう!

★招待講演

*小玉 健次郎1 (1.銚子ジオパーク推進市民の会)

キーワード:ジオパーク、ジオツーリズム、銚子ジオパーク

銚子ジオパークは東京から東へ約100km、太平洋に面した関東平野の東端にあり、東と南は太平洋、北は利根川と、三方を海と川に囲まれた小さな半島のような形をしている。千葉県銚子市の全域がそのエリアになっている。東京駅からJR特急で約1時間45分、銚子駅に降り立つと、醤油、魚、そして海の匂いがする。駅前の広い道路を進むと利根川に突き当たる。対岸は茨城県で、川幅は海の入り江のように広く、日本一の流域面積をもつ利根川の大きさを実感できる。河口内側右岸にある第一、第二漁港、河口外側の第三漁港、さらに江戸時代に紀州人が築港したという外川漁港を合わせ、水揚げ量は2015年まで5年連続日本一を達成した。
銚子で醤油醸造が始まったのは江戸時代の初め、それが江戸の繁栄とともに盛んになったのは、重い製品の醤油樽を川船に乗せて利根川を遡り、江戸に大量輸送することができたからだと言われている。江戸時代の銚子は、西から移り住んだ大勢の人々が獲った魚、大量の醤油、そして東北から江戸に運ぶ城米などの物資を積んだ高瀬舟が行きかい、江戸から来た「銚子磯濱巡り」をする人々でにぎわう、物流と人々が交流する要衝の地であった。
銚子といえば、犬吠埼灯台が有名であるが、灯台が立つその足元の海岸一帯は、アンモナイトや琥珀、そして植物やサメの歯などの化石産地として有名である。海岸の地層ができた時代は1億年以上前の白亜紀前期で、恐竜のいた時代である。地層には嵐が起きたときに海底で形成された砂の動いた痕や、海底に生息した生物の這い廻った痕などが残されており、「犬吠埼白亜紀浅海堆積物」として国指定の天然記念物となっている。さらに南の海岸には、「犬岩」という、犬が耳をピンと立てて沖を見つめているような大きな岩体がある。できた時代はジュラ紀と推定されている。銚子には1億年を超える古い岩体が何ヶ所も存在する。これらの岩は、昔から今の銚子の場所にあったのではなく、日本列島の成り立ちに伴い、遠い大陸の縁で形成され、北に動き、日本海ができたときに、この東の端まで移動して来たと言われている。また南には太平洋に面した「屏風ケ浦」という全長約10kmの壮大な崖がある。この崖は、300万年ほど前から、現在の場所の海底で形成され、徐々に隆起し、海面下で表面を平らに削られ、さらに隆起して陸地になり、今度は横から波によって削られてできた海食崖だと説明されている。大地の成り立ちの壮大なドラマを、じかに現場で体感することができる。
黒潮と親潮そして利根川がもたらす沖合の豊かな漁場、夏涼しく冬暖かい温暖な気候、春キャベツやダイコンなどの野菜栽培、多様な海岸植物、野鳥、そして古くから人々が交流して育まれた産業や文化など、どれもが、地質的地形的特徴によってもたらされたことをよく理解することができる。見学する場所は、そのほとんどが海岸線沿いにあるので、マイカー、レンタサイクル、銚子電鉄、あるいはウォーキングで巡ることができる。美味しい海の幸を食べながら、自然と共生して生きてきた人々の暮らしも、楽しく体験していただきたい。