日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-04] ジオパークへ行こう

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

17:15 〜 18:30

[O04-P41] 花の山「アポイ」保全再生の取り組み

*坂下 志朗1 (1.アポイ岳ジオパーク推進協議会)

キーワード:ジオパーク、高山植物、保全、再生

アポイ岳ユネスコ世界ジオパークのメインサイトである「アポイ岳」は、810.2mと低標高ながら、高山植物の宝庫である。アポイ岳全体がかんらん岩という特殊な超塩基性岩でできていることや、厳しい環境条件が強く関係している。かんらん岩には植物の生育を阻害するニッケルやマグネシウムなどが含まれている。また海に面しており、1年中風が強く、夏は海霧に覆われるため冷涼な気候、冬は積雪が少なく厳しい寒気にさらされ、森林の成長を阻む一方、我慢強い高山植物が多く生息している。
このアポイ岳の高山植物群落は、1952年に国の特別天然記念物に指定されたものの、60年以上が過ぎた現在では、固有種ヒダカソウをはじめとした過去の大量盗掘や地球温暖化の影響と思われる植生遷移、エゾシカによる採餌圧などの要因により、高山植物群落の個体数減少が急速に進んでいる。
これまで、地元自然保護団体のアポイ岳ファンクラブが中心となり、盗掘防止パトロール活動や登山道整備、また研究者や地元有志らによる高山植物生態調査、エゾシカ調査、再生試験などの再生活動にも取り組んできたが、総合的な現況把握とそれに基づく対策の立案が喫緊の課題となっていた。また、アポイ岳周辺は日高山脈襟裳国定公園内に位置し、自然公園法などの法令規制が厳しく、行為事業の許認可を受けるにも時間と労力を費やしてきた。
こういった背景から、昨年10月、様似町は既存の組織や科学者の専門分野をこえ、科学的な保全対策検討を行うため、アポイ岳の高山植物等に専門的知見を持つ学識者を中心とした組織「アポイ環境科学委員会」を設立。この委員会は、8名の委員(植物専門5名、エゾシカ専門1名、ヒメチャマダラセセリ1名、アポイ岳ファンクラブ1名)と、共同事務局(様似町、北海道)で構成している。この委員会の位置づけは、アポイ岳の高山植物等をはじめとする様似町の自然環境の保全対策を科学的に検討するとともに、必要な対策について助言する機関としている。この委員会の助言を受け、各関係行政機関の保全対策に反映させると共に法令手続きの調整を図り、アポイ岳ファンクラブが中心となった実行部隊の組織を確立しながら、研究者、住民、行政の三位一体の取り組みを推進する。
具体的な取り組みとして、平成28年度から平成30年度は文化庁補助メニューの天然記念物再生事業(3ヵ年)を活用し、ハイマツ群落や森林の増加と高山植物群落減少の関係解明、利用者増大に伴うオーバーユースの状況と対策、ヒダカソウの保全・再生の実践(域内・域外)、その他の希少種の個体数や生活史の把握、エゾシカ個体数密度の増大による影響の把握と対策の実施などを行なう。また、これまで設定してきた試験地についても組織的なモニタリングを継続的に実施する。
最終的な目標として、アポイ岳の高山植物等の保全再生を図るため、包括的な計画を策定し、各種保全行為を実施するにあたっての根拠とするとともに、それを自然公園法に基づく公園計画(植生復元又は自然再生)に反映させ、恒久的な対策とすることで、国の特別天然記念物に指定された当時のアポイ岳の姿を取り戻したいと考えている。