日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-04] ジオパークへ行こう

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

17:15 〜 18:30

[O04-P44] 島原半島ユネスコ世界ジオパークにおける国際交流の成果と課題

*城谷 敦史1大野 希一1 (1.島原半島ジオパーク協議会)

キーワード:島原半島ユネスコ世界ジオパーク、国際交流、済州島ユネスコ世界ジオパーク、香港ユネスコ世界ジオパーク

1.はじめに
世界ジオパークネットワークに加盟しているメンバーにとって、ネットワーク活動への参加は極めて重要な意味を持つ。なぜなら、ネットワーク活動を通じて、互いの優れた活動事例を学び、互いのジオパークの質を向上させることが出来るためである。ここでは、島原半島ユネスコ世界ジオパークが行ってきた、他所の海外ジオパークとの国際交流の実績と、今後の課題を紹介する。
2.済州島ユネスコ世界ジオパークとの交流
2010年にランカウイユネスコ世界ジオパークで行われた「第4回ジオパーク国際ユネスコ会議」をきっかけに、島原半島ジオパーク協議会事務局の専門員と韓国内のジオパーク関係者が交流を重ねてきた。2011年に韓国・大邱市で行われた国際シンポジウムや、慶北大学における講演会にて、島原半島ジオパークでの活動事例の紹介を経て、2013年に正式に済州島世界ジオパークと島原半島ジオパークが姉妹提携を結んだ。2015年2月には、島原半島ジオパークを構成する3市の市長および議長を中心に訪問団を結成し、済州島世界ジオパークを訪問し、ジオパークと世界自然遺産、生物系保全地域が同じ施設内で運営されていることや、「ジオブランド」を開発し、それらを活用した地域資源の保全、住民の利益創出、体験型の地域観光の連携の実態を学んだ。
3.香港ユネスコ世界ジオパークとの交流
島原半島がGGNに加盟した2009年から、香港のジオパーク事務局員が定期的に島原半島を訪れ、情報の交換を行っていた。2012年には、専門員が香港ジオパークでカルデラ噴火や火山学に関するレクチャーを実施した。これらの活動を経て、2013年に正式に香港世界ジオパークと島原半島ジオパークが協力協定を締結した。当初は事務局員同士の交流にとどまっていたが、現在は、香港から小学生~高校生が、島原半島を含む阿蘇や糸魚川といった、日本国内の世界ジオパークを定期的に訪問している。また、2015年には島原市の中学生も香港ジオパークを訪れ、現地の高校生と語学交流をするなど、行政職員だけでなく、様々な立場の人が、ジオパークを活用した国際的な人的交流に参加しつつある。
4.成果と課題
島原半島地域は、国内のユネスコ世界ジオパークの中で唯一2つのユネスコ世界ジオパークと公的な関係を結んでいる。この関係を維持していく上で、克服すべき3つの課題がある。
一つ目は財源の確保である。韓国や中国等、比較的近い地域と公的関係を結んでいるとはいえ、実質的な活動を続けていくためには財源の確保が必要である。ジオパークとしての国際交流の必要性を、行政関係者に理解もらう必要がある。
二つ目は、国際交流に対する積極的な態度である。島原半島が行っている国際交流は、他のユネスコ世界ジオパークからのリクエストに対応している事例がほとんどであり、島原半島ユネスコ世界ジオパークとして、海外の地域に積極的な働きかけを行っている状況にはない。双方にとって国際交流がメリットをもたらしうるような、積極的な働きかけが、島原半島に求められる。
三つ目は、外国語専門員の雇用である。国内の各ユネスコ世界ジオパークでは、国際交流を円滑に進めるために外国語専門員を雇用しているが、島原半島には外国語専門員がいない。せっかくジオパークという仕組みを活用して築き上げた国際関係を維持するためのマンパワーの整備が、島原半島ジオパークにとって急務である。