09:45 〜 10:00
[PCG10-04] Current Status of Hayabusa2 Landing Site Deliberation
キーワード:Hayabusa2, Interdisciplinary Science Team, landing site
2014年12月に打ち上げに成功した「はやぶさ2」は、2018年7月にC型小惑星162173 Ryuguへ到着する予定である。Ryuguでは18ヶ月間滞在し、試料採取を目的とした3回のタッチダウン(TD)が行われる (Yoshikawa et al., 2014)。「はやぶさ2」ミッションの科学的成果を最大化するためには、搭載機器であるONC, NIRS3, TIR, LIDAR, MASCOTから得られる小惑星観測のリモートセンシングデータと、隕石試料や模擬試料を用いた地上分析データの両者を統合し、最先端の科学的知見からTD地点を選定することが重要である。そのため、「はやぶさ2」のサイエンスの全体像を構築する統合サイエンスチーム (Kobayashi et al., 2014) は、2014年6月にTD地点選定の指標となる5つ(隕石タイプ・水質変成度・宇宙風化度・揮発性物質量・粒子サイズ)のワーキンググループ(WG)を組織した。このWGは、観測と分析が融合することにより最適なTD地点を選定し、また両者を横断した新しい研究テーマへと惑星科学の裾野を広げることを目的としている。本発表では、これまでの各WGの検討状況を報告する。
隕石タイプWG:Ryugu全球の隕石タイプを速やかに判別することを第一の目標とし、さらに、局所的な不均一性の有無に着目し、C型小惑星の不均一性についても議論を進めている。過去の隕石研究により、多くの炭素質隕石は、mm-cmスケールでの不均一性を持つことが示されているが、それ以上のスケールでの状態は不明である。「はやぶさ2」で得られるm(メートル)スケールでの小惑星表層状態を正しく評価するため、隕石タイプ間、及び隕石タイプ内バリエーションの基礎データ構築を図る。小惑星表層の物質分布から小惑星形成過程の議論へと発展させるには、角礫岩化・変成・宇宙風化作用を考慮する必要があり、随時他のWGとの合同会議を開催することで検討を進めている。
水質変成度・宇宙風化度WG:Ryuguで採取したい「魅力的な物質」について議論し、(1) Ryuguを代表するような試料、(2)始原的な試料、(3)その他、の3種類が挙げられた。まず(2)に的を絞り、「リモセンデータを用いてどのように判別できるか」について現在の知見から具体的な検討を行った。本WGでは「始原的」=「水質変成、熱変成、宇宙風化をあまり経験しておらず、非平衡アモルファスシリケイトが存在する状態」を想定した。この場合、予想されるスペクトルは、低アルベド・特定の含水鉱物の存在を示唆する0.7μmは無しor弱い・含水層に起因する3μm付近の吸収は有り・無水珪酸塩鉱物に起因する吸収は無しor弱い、と考えられる。一方で、スペクトル形状は熱変成や宇宙風化など複数のパラメータが関与しているため、物質科学的研究がなされている隕石等の分光分析データのさらなる蓄積が必要であるという問題提起がなされた。今後は(1)(3)についても同様に思考実験を行う。
揮発性物質WG:小惑星表面での有機物の探索ははやぶさ2の主要な科学目標の1つであり、小惑星の始原性を推定するために有機物含有量の観測が期待される。例えば、先行研究により、CM, CR, Tagish Lake隕石の反射スペクトルにおける波長0.55μmのアルベドと不溶性有機物含有量との間、波長0.39μmと全炭素含有量との間 (Hiroi et al., 2016)、に相関が見られ、水質変成度の判別に有効であることがわかっている。水質変成を受けた隕石グループほど炭素量が“見かけ上”多い傾向にあるが、始原性のパラメータとしては不溶性/可溶性有機物の量比を用いる評価法がより適切であると提案する。一方で、熱変成や宇宙風化を判別する観測指標データはまだ確立されていないため、地上実験での更なる検証が必要である。
粒子サイズWG: 現状想定される表面状態決定法を整理した。特に、反射率の位相角依存性と表面状態の関係性と、LIDAR受光強度を用いた表面ラフネスの推定可能性についての情報共有を行っている。今後、複数機器を統合した表面状態推定法の検討を続けていく。加えて、他WGと協力しスペクトル形状に与える影響の評価を進める。
いずれのWGも、まずは観測と分析の意識共有、TD選定への科学的知見提供、そして新しいサイエンステーマの創出へと歩みを進めている段階である。観測データの解釈には、隕石等の地上分析データが必要不可欠であり、「はやぶさ2」帰還後の回収試料の採取・分析にはRyuguでの観測データが非常に有用である。今後もWGの活動を継続し、「はやぶさ2」ミッション成功と惑星科学の発展へつなげたい。
隕石タイプWG:Ryugu全球の隕石タイプを速やかに判別することを第一の目標とし、さらに、局所的な不均一性の有無に着目し、C型小惑星の不均一性についても議論を進めている。過去の隕石研究により、多くの炭素質隕石は、mm-cmスケールでの不均一性を持つことが示されているが、それ以上のスケールでの状態は不明である。「はやぶさ2」で得られるm(メートル)スケールでの小惑星表層状態を正しく評価するため、隕石タイプ間、及び隕石タイプ内バリエーションの基礎データ構築を図る。小惑星表層の物質分布から小惑星形成過程の議論へと発展させるには、角礫岩化・変成・宇宙風化作用を考慮する必要があり、随時他のWGとの合同会議を開催することで検討を進めている。
水質変成度・宇宙風化度WG:Ryuguで採取したい「魅力的な物質」について議論し、(1) Ryuguを代表するような試料、(2)始原的な試料、(3)その他、の3種類が挙げられた。まず(2)に的を絞り、「リモセンデータを用いてどのように判別できるか」について現在の知見から具体的な検討を行った。本WGでは「始原的」=「水質変成、熱変成、宇宙風化をあまり経験しておらず、非平衡アモルファスシリケイトが存在する状態」を想定した。この場合、予想されるスペクトルは、低アルベド・特定の含水鉱物の存在を示唆する0.7μmは無しor弱い・含水層に起因する3μm付近の吸収は有り・無水珪酸塩鉱物に起因する吸収は無しor弱い、と考えられる。一方で、スペクトル形状は熱変成や宇宙風化など複数のパラメータが関与しているため、物質科学的研究がなされている隕石等の分光分析データのさらなる蓄積が必要であるという問題提起がなされた。今後は(1)(3)についても同様に思考実験を行う。
揮発性物質WG:小惑星表面での有機物の探索ははやぶさ2の主要な科学目標の1つであり、小惑星の始原性を推定するために有機物含有量の観測が期待される。例えば、先行研究により、CM, CR, Tagish Lake隕石の反射スペクトルにおける波長0.55μmのアルベドと不溶性有機物含有量との間、波長0.39μmと全炭素含有量との間 (Hiroi et al., 2016)、に相関が見られ、水質変成度の判別に有効であることがわかっている。水質変成を受けた隕石グループほど炭素量が“見かけ上”多い傾向にあるが、始原性のパラメータとしては不溶性/可溶性有機物の量比を用いる評価法がより適切であると提案する。一方で、熱変成や宇宙風化を判別する観測指標データはまだ確立されていないため、地上実験での更なる検証が必要である。
粒子サイズWG: 現状想定される表面状態決定法を整理した。特に、反射率の位相角依存性と表面状態の関係性と、LIDAR受光強度を用いた表面ラフネスの推定可能性についての情報共有を行っている。今後、複数機器を統合した表面状態推定法の検討を続けていく。加えて、他WGと協力しスペクトル形状に与える影響の評価を進める。
いずれのWGも、まずは観測と分析の意識共有、TD選定への科学的知見提供、そして新しいサイエンステーマの創出へと歩みを進めている段階である。観測データの解釈には、隕石等の地上分析データが必要不可欠であり、「はやぶさ2」帰還後の回収試料の採取・分析にはRyuguでの観測データが非常に有用である。今後もWGの活動を継続し、「はやぶさ2」ミッション成功と惑星科学の発展へつなげたい。