10:45 〜 11:00
[PCG10-17] Observation of Mars in MMX mission
キーワード:Mars, Atmosphere, MMX
火星の気候形成において要となる、水や二酸化炭素など揮発性物質の宇宙空間への散逸や、表層の様々な水リザーバ間の水輸送は、大気中の水蒸気量、大気-地殻間の水交換、大気大循環に強く影響される。地球では水蒸気の温室効果や潜熱が担う熱的効果を、火星では大気ダストの放射効果が担っているため、上記の理解のためには水や大気物質のみならずダストの挙動の理解も必須である。
大気-地殻間の水交換には、様々な大気現象、とくに大規模地形の影響を受けた局地気象や数十Kに達する気温の日変化に伴う相変化が関わっていると想像される(Melchiorri et al. 2009)。たとえば赤道域の上昇流域での氷雲形成が上層大気の水蒸気量を規定する、特定地域での氷雲形成がwater equivalent hydrogenの不均一分布を説明する、などの可能性が指摘されている(Feldman et al. 2005)。しかし従来の極軌道の火星周回機による水蒸気や氷雲の観測では広域のマッピングに数十日を要し、このような短時間スケールの現象をとらえることができなかった。
大気ダストのうち、年間を通して存在する背景ダスト成分は、供給源が特に謎に包まれている(Kahre et al. 2006)。候補となる流体現象の多くが顕著な地方時依存性や日変化サイクルを伴うと想像されており、そのような時間発展はMGS、 Mars Expressなど従来の極軌道の火星周回機によって得られる1太陽日に1枚のモザイク画像ではとらえられなかった(Guzewich et al. 2015)。とくにダストプルームや斜面風といった特定の地方時において短時間で発達するメソスケールの現象は、近年発見された高高度でのダスト混合比の極大をもたらす可能性も指摘されているが、観測的手がかりがない(Heavens et al. 2011)。
火星表層の物質輸送においてこのように局地的で時間スケールの短い現象が重要となりうることは、火星大気が薄く、放射加熱や運動の時定数が短いことの帰結である。高空間分解能の連続リモートセンシングによって、局地的な水蒸気輸送や相変化の日変化サイクル、局地的で短時間スケールのダストストームの発生地域とライフサイクルを明らかにすることが、火星気候の支配メカニズムの理解につながる。MMXの高高度の火星周回軌道からは、南北両半球の広範囲を継続的に観測することが可能であり、このような研究のための理想的なプラットフォームと言える。そこで我々は、時間分解能1時間程度で周回ごとに数時間にわたって大気の分光・撮像観測を行うことを検討している。この連続モニターを数日間続けるキャンペーン観測を間欠的に行い、日変化スケールから季節変化までの変動を把握する。観測機器としては、現時点では可視カメラ、近赤外分光撮像器、熱赤外カメラ、紫外分光器が候補である。
大気-地殻間の水交換には、様々な大気現象、とくに大規模地形の影響を受けた局地気象や数十Kに達する気温の日変化に伴う相変化が関わっていると想像される(Melchiorri et al. 2009)。たとえば赤道域の上昇流域での氷雲形成が上層大気の水蒸気量を規定する、特定地域での氷雲形成がwater equivalent hydrogenの不均一分布を説明する、などの可能性が指摘されている(Feldman et al. 2005)。しかし従来の極軌道の火星周回機による水蒸気や氷雲の観測では広域のマッピングに数十日を要し、このような短時間スケールの現象をとらえることができなかった。
大気ダストのうち、年間を通して存在する背景ダスト成分は、供給源が特に謎に包まれている(Kahre et al. 2006)。候補となる流体現象の多くが顕著な地方時依存性や日変化サイクルを伴うと想像されており、そのような時間発展はMGS、 Mars Expressなど従来の極軌道の火星周回機によって得られる1太陽日に1枚のモザイク画像ではとらえられなかった(Guzewich et al. 2015)。とくにダストプルームや斜面風といった特定の地方時において短時間で発達するメソスケールの現象は、近年発見された高高度でのダスト混合比の極大をもたらす可能性も指摘されているが、観測的手がかりがない(Heavens et al. 2011)。
火星表層の物質輸送においてこのように局地的で時間スケールの短い現象が重要となりうることは、火星大気が薄く、放射加熱や運動の時定数が短いことの帰結である。高空間分解能の連続リモートセンシングによって、局地的な水蒸気輸送や相変化の日変化サイクル、局地的で短時間スケールのダストストームの発生地域とライフサイクルを明らかにすることが、火星気候の支配メカニズムの理解につながる。MMXの高高度の火星周回軌道からは、南北両半球の広範囲を継続的に観測することが可能であり、このような研究のための理想的なプラットフォームと言える。そこで我々は、時間分解能1時間程度で周回ごとに数時間にわたって大気の分光・撮像観測を行うことを検討している。この連続モニターを数日間続けるキャンペーン観測を間欠的に行い、日変化スケールから季節変化までの変動を把握する。観測機器としては、現時点では可視カメラ、近赤外分光撮像器、熱赤外カメラ、紫外分光器が候補である。