11:15 〜 11:30
[PCG10-19] The velocity and mass distributions of impact ejecta in the vicinity of the impact point: An application to the material transport from Mars to Phobos
キーワード:ejecta, hyper-velocity impact experiment, SPH simulation
高速度衝突によって発生するイジェクタのうち非常に速いものは極めて遠方まで輸送される. フォボス表面には衝突によって放出された火星物質が含まれていることが議論されている(Ramsley and Head 2013).どのぐらいの火星物質がフォボスへ輸送されるかという問題を考えるには、衝突点近傍で放出されるイジェクタの最高速度とその質量を調べることが必要である.
過去に弾丸半径以遠から放出される衝突イジェクタの速度分布を調べた研究はあるが(e.g. Hermalyn and Schultz 2011, Tsujido et al., 2015),衝突点直下から放出される高速なイジェクタは十分に観察されていない.また,数値コードを用いてイジェクタの振る舞いを詳細に調べた研究があるが(Johnson et al., 2014),正面衝突のみを調べたものであり,斜め衝突については調べられていない.またシミュレーションの結果を高速度衝突実験の結果と比較を通して結果の妥当性が検証されてはいない.
本研究では高速度衝突実験を行い,衝突点近傍から放出される非常に速いイジェクタを高速度ビデオカメラで観察しその速度を調べた.我々はSPHコードを用いた衝突シミュレーションも行い,実験との比較を通してシミュレーション結果の妥当性を検証した.また実験からは決めることが難しい高速イジェクタの質量を調べるとともに,標的由来の物質と弾丸由来の物質がイジェクタ中でどのように分布しているかを調べた.
弾丸と標的にはポリカーボネイトを用いた.衝突速度は3.56−7.04 km s-1で,衝突角度は90度(正面衝突)と45度で実験を行った.高速度衝突実験には千葉工業大学と宇宙科学研究所の二段式軽ガス銃を用いた.高速度ビデオカメラを使用し衝突現象を0.2 μs frame-1で観察した.宇宙科学研究所での実験では高速度ビデオカメラを2台使用し,上方向と横方向から撮影した.
3次元SPHコード(e.g. Genda 2012)を用いて衝突シミュレーションを行った.弾丸には104, 105, 106 個のSPH粒子を用いて,空間解像度の影響がイジェクタの振る舞いに与える影響を調べた.
衝突実験から,正面衝突ではイジェクタカーテンの形状は軸対称であることが観察された.一方,斜め衝突ではイジェクタカーテンの形状は非対称であり,別々の方向に放出する二成分のイジェクタが観察された.一つは標的表面に沿って弾丸の軌道の下流方向に移動するものである.これは弾丸貫入時に起こるjetting過程によって生成されたものだと考えられる(Kurosawa et al., 2015).もう一つは標的表面から斜め上方へ放出される成分である.この二つの成分の境界では折れ曲がりの構造が観察された.最も高解像度のSPHコードの計算結果(弾丸の粒子数が106個)は実験結果のイジェクタカーテンを良く再現しており,衝突点から遠方に飛んでいるイジェクタや斜め衝突における二成分のイジェクタ,折れ曲がりの構造が観察された.また正面衝突におけるイジェクタカーテンの端はほぼ標的物質が占めているのに対し,斜め衝突における標的表面に沿って移動する放出物の先端は弾丸物質が占めていることが分かった.これらの結果をもとに火星からフォボスへの物質輸送の問題について議論する.
過去に弾丸半径以遠から放出される衝突イジェクタの速度分布を調べた研究はあるが(e.g. Hermalyn and Schultz 2011, Tsujido et al., 2015),衝突点直下から放出される高速なイジェクタは十分に観察されていない.また,数値コードを用いてイジェクタの振る舞いを詳細に調べた研究があるが(Johnson et al., 2014),正面衝突のみを調べたものであり,斜め衝突については調べられていない.またシミュレーションの結果を高速度衝突実験の結果と比較を通して結果の妥当性が検証されてはいない.
本研究では高速度衝突実験を行い,衝突点近傍から放出される非常に速いイジェクタを高速度ビデオカメラで観察しその速度を調べた.我々はSPHコードを用いた衝突シミュレーションも行い,実験との比較を通してシミュレーション結果の妥当性を検証した.また実験からは決めることが難しい高速イジェクタの質量を調べるとともに,標的由来の物質と弾丸由来の物質がイジェクタ中でどのように分布しているかを調べた.
弾丸と標的にはポリカーボネイトを用いた.衝突速度は3.56−7.04 km s-1で,衝突角度は90度(正面衝突)と45度で実験を行った.高速度衝突実験には千葉工業大学と宇宙科学研究所の二段式軽ガス銃を用いた.高速度ビデオカメラを使用し衝突現象を0.2 μs frame-1で観察した.宇宙科学研究所での実験では高速度ビデオカメラを2台使用し,上方向と横方向から撮影した.
3次元SPHコード(e.g. Genda 2012)を用いて衝突シミュレーションを行った.弾丸には104, 105, 106 個のSPH粒子を用いて,空間解像度の影響がイジェクタの振る舞いに与える影響を調べた.
衝突実験から,正面衝突ではイジェクタカーテンの形状は軸対称であることが観察された.一方,斜め衝突ではイジェクタカーテンの形状は非対称であり,別々の方向に放出する二成分のイジェクタが観察された.一つは標的表面に沿って弾丸の軌道の下流方向に移動するものである.これは弾丸貫入時に起こるjetting過程によって生成されたものだと考えられる(Kurosawa et al., 2015).もう一つは標的表面から斜め上方へ放出される成分である.この二つの成分の境界では折れ曲がりの構造が観察された.最も高解像度のSPHコードの計算結果(弾丸の粒子数が106個)は実験結果のイジェクタカーテンを良く再現しており,衝突点から遠方に飛んでいるイジェクタや斜め衝突における二成分のイジェクタ,折れ曲がりの構造が観察された.また正面衝突におけるイジェクタカーテンの端はほぼ標的物質が占めているのに対し,斜め衝突における標的表面に沿って移動する放出物の先端は弾丸物質が占めていることが分かった.これらの結果をもとに火星からフォボスへの物質輸送の問題について議論する.