日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG20] 宇宙科学・探査の将来計画と関連する機器・技術の現状と展望

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 203 (2F)

コンビーナ:*吉川 一朗(東京大学)、笠原 禎也(金沢大学総合メディア基盤センター)、座長:吉川 一朗(東京大学)、桑原 正輝(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

11:15 〜 11:30

[PCG20-09] ワンチップ新型プラズマ波動スペクトル受信機の設計開発

*頭師 孝拓1小嶋 浩嗣1大西 啓介1尾崎 光紀2八木谷 聡2山川 宏1 (1.京都大学、2.金沢大学)

キーワード:プラズマ波動、ASIC

プラズマ波動受信機は宇宙プラズマ観測において不可欠であり、これまで様々な科学衛星に搭載されてきた。しかしながら、近年では搭載機器の多様化や衛星の小型化からプラズマ波動受信機の小型軽量化が求められている。これに対し、我々は特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit: ASIC)技術を利用したプラズマ波動受信機の小型集積化に取り組んでいる。本発表においては、新型のスペクトル受信機について述べる。これまでのスペクトル受信機は、周波数掃引型(Sweep Frequency Analyzer: SFA)、多チャンネル型(Multi Channel Analyzer: MCA)、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform: FFT)型の3種類に分けることができる。このうち、SFA、MCAについては、受信機の周波数分解能と時間分解能の両立が難しいという問題がある。FFT型の受信機はこの問題を解決することができる一方で、広帯域での信号増幅を行うため、ダイナミックレンジの劣化を招いてしまう。本研究では、上記の問題を解決することのできる新型スペクトル受信機を提案する。
新型スペクトル受信機は、アナログ回路による信号処理とCPU・FPGA等によるディジタル信号処理を組み合わせた構成となっている。入力された信号はアナログ回路において帯域制限および増幅が行われ、A/D変換された後にディジタル信号処理部でFFTが行われる。この処理を、10 Hz~1 kHz、1 kHz~10 kHz、10 kHz~100 kHzの3つの周波数帯で行うことで、観測対象である10 Hz~100 kHz全体のスペクトルを取得する。この手法は、掃引ステップ数が少ないために高い時間分解能が実現でき、またFFTにより各周波数帯において十分な周波数分解能を得られる。さらに、帯域を絞っての増幅となるので上述のダイナミックレンジの劣化も生じない。また、各バンドでサンプリング周波数を必要最低限の値へと設定することで、従来のFFT型受信機と比べて消費電力を小さくすることができる。
本研究では、上記の新型スペクトル受信機に必要となるアナログ回路をASICにより設計し、十分な性能を持つ回路の実現に成功した。受信機に必要なアナログ回路及びその制御用ディジタル回路が5 mm x 5 mmのチップ内に収められている。また、開発したASICチップに加え、PCからの制御が可能なA/Dボードを利用し、性能評価用のプロトタイプを作成した。プロトタイプモデルにおいては、時間分解能が0.4秒、10 Hz~1 kHz、1 kHz~10 kHz、10 kHz~100 kHzの各バンドにおける周波数分解能が3.2 Hz、32 Hz、320 Hzと、十分な性能を得られることを確認した。発表においては、受信機の設計および性能の詳細を述べる。