日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG20] 宇宙科学・探査の将来計画と関連する機器・技術の現状と展望

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*吉川 一朗(東京大学)、笠原 禎也(金沢大学総合メディア基盤センター)

17:15 〜 18:30

[PCG20-P05] 波動分布関数法に適した先験情報の検討

*太田 守1笠原 禎也1後藤 由貴1 (1.金沢大学大学院自然科学研究科)

キーワード:プラズマ波動、不良設定問題、波動分布関数法、モデル選択

地球磁気圏内を伝搬するプラズマ波動は, その励起・伝搬過程において伝搬経路上のプラズマ媒質の影響を強く受ける. 宇宙空間プラズマ環境の理解のためには, 科学衛星を用いた「その場」の詳細観測が重要であり, 波動観測がその有力な手段となっている. また, 波動の偏波解析や伝搬ベクトルの推定には, 衛星が観測する複数の電磁場成分のクロススペクトルからなるスペクトルマトリクスが一般に用いられている. 2016年に打ち上げ予定のジオスペース探査衛星「ERG」では, 搭載されるプラズマ波動電磁場観測装置(PWE)においてパワースペクトルとともにスペクトルマトリクスを作成し常時地上に伝送することが計画されている. これらの連続データは, 間欠的な観測しか行えない高分解能な波形データを降ろすタイミングを決めるための判断材料として用いられる.
また, スペクトルマトリクスを用いるVLF波動の伝搬ベクトル推定手法としては, 1. Means法を代表とする単一平面波を仮定し偏波の情報を用いる手法と, 2. 複数のインコヒーレントな波の重ね合わせであると観測信号を仮定し統計的な扱いをする波動分布関数法が提案されている. このうち, 波動分布関数法は複数の波源の伝搬ベクトルを推定する必要があり, 一般には入力データの要素数と比べてその推定しなければならないパラメータ数は多い. したがって, 解が一意に定まらず何らかの先験情報(モデル)を付加することで解を特定する必要があり, これまでにさまざまなモデルが提案されてきた. しかし, モデルの決め方に依存して推定像が大きく変化することに加え, 各モデルの良し悪しを評価する方法が確立されていないために複数のモデルによる推定結果を総合的に判断して解の妥当性を評価しなければならなかった. つまり, 現状では波動分布関数法の信頼性が真に担保されず, さらに推定を行う研究者の負担が大きいという問題がある.
本研究では, 恣意的なモデルの仮定を用いない新たな波動分布関数法を提案する. この手法では, スペクトルマトリクスの半正定値性と波動分布関数の非負値性から解集合が有界となることを利用している. また, 解集合上の一様分布を仮定し, 推定像の平均や信頼区間といった統計量を算出するため, 解を一意に定めるためのモデルを与える必要がないことが特徴である. 最後に, モデル選択基準を用いてモデルの妥当性を客観的に評価するための方法について検討を行う.