日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG20] 宇宙科学・探査の将来計画と関連する機器・技術の現状と展望

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*吉川 一朗(東京大学)、笠原 禎也(金沢大学総合メディア基盤センター)

17:15 〜 18:30

[PCG20-P06] 太陽風粒子の熱構造発展の解明に向けた超小型磁場観測器の開発

*野村 麗子1松岡 彩子1池田 博一1小嶋 浩嗣2 (1.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、2.京都大学生存圏研究所)

キーワード:フラックスゲート磁力計、プラズマ乱流、太陽風、波数解析

太陽風の温度 T は太陽圏動径方向に沿って断熱的に冷えると考えられていたが,惑星探査機Voyager 2 号の観測によると,断熱変化で得られる予想温度(T=T0•R-4/3)よりも太陽風は温かい(T=~T0•R-1/2)ことがわかっている[Richardson and Paularena, 1995].これは,宇宙空間中における太陽風粒子の加熱を示唆しているが,その加熱物理機構は未だ明らかにされていない.この加熱機構のひとつとしては太陽風中のプラズマ乱流の散逸が有力視されている.惑星間空間中の太陽風乱流スペクトルはHelios1衛星[Roberts+1987]やUlysses衛星[Goldstein+1995]によって,地球近傍はCluster衛星[Sahraoui+2007;2010]によって調べられ,乱流のエネルギーEと波数kの関係(log10(E)〜kA+E0)には,イオンや電子の慣性長に対応するkでのキンクが存在することが観測されている.これらのキンクは,波動粒子相互作用によって乱流から粒子へエネルギーが受け渡された可能性を示しているが,粒子にエネルギーを渡す役割を持つはずの波動モードがわからない等,物理機構は未解明である.
これまでの惑星間空間での観測的研究は単機衛星によるものであったため,時間・空間変化を分離することができず,3次元物理量である波数ベクトルを導出できなかった.このため波動モード決定に必要な分散関係を明らかにすることができなかった.本研究では,ソーラーセイルミッション(木星トロヤ群小惑星探査)の大規模な(一辺~50m)薄膜太陽電池パネルの4隅に磁力計を搭載し,波数を計測することを目指して,センサ部と信号処理部一体型の超小型・軽量, 省電力かつ低ノイズの磁場観測器を開発している.大型薄膜太陽電池パネルに搭載するためには,従来の磁場観測器のままでは信号処理回路部が大きく重すぎることが問題とのひとつとなる.そこで,センサ部と信号処理回路で構成されているフラックスゲート磁力計のうち,信号処理回路のアナログ回路部全体を5mm 角の集積回路(ASIC; Application Specific Integrated Circuit)に納めることにより軽量化及び1/3 以下に小型化をおこなった.
本発表では回路の各機能部分における性能について,シミュレーション結果との比較とともに,ASICを組み込んだ回路の評価を報告する.