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[PCG21-13] 太陽系地球型惑星大気観測専用ミリ波望遠鏡によるSPARTプロジェクトの現状報告
キーワード:金星大気、電波望遠鏡、太陽活動
近年、系外惑星の探査研究が活発に展開されている。我々は、中心星が周囲の惑星の中層大気の物理・化学的環境に与える影響を理解するため、まずG型星である太陽の活動が地球型惑星の中層大気に与える影響について理解を深めるべく、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の口径10 mの単一鏡を惑星大気監視専用ミリ波望遠鏡として運用し、太陽系惑星大気監視プロジェクト(SPART:Solar Planetary Atmosphere Research Telescope) を推進している。これまでにSPART 望遠鏡は、主として、金星や火星の一酸化炭素 (12CO J=1-0 230.538 GHz, J=2-1 115.2712018 GHz, 13CO J=2-1 230.3986765 GHz )の回転遷移によるスペクトル線のモニタリングを実施してきた。2011-2015年 の観測期間において、金星の高度80 km 付近のCO 混合比の全球平均は約60 ppmv であった。野辺山宇宙電波観測所の太陽電波偏波計1 GHz 帯の電波強度データによると、この観測期間中、太陽はほぼ極大期を維持していた。Cycle-22における過去の先行研究によるCO混合比(高度80 km)と比べて、このCycle-24におけるCO混合比は半減している。このことは近年の太陽活動の低下傾向との関連を示唆している可能性がある。固有磁場を持たない金星や火星に対して、太陽からの高エネルギ粒子の降込みが、COの生成にどのような影響を与えるかを理解するため、ベーテ・ブロッホの解析式を用いた数値モデル計算を実施したところ、COの生成を誘発するCO2の高エネルギ粒子(protonなど)によるイオン化率はちょうど高度80-90 km付近で極大となったが、その効果は紫外線よりも小さいことも分かった。太陽はこれから極小期を迎えるため、金星のCOが今後減少に転じるのか、観測を継続していく予定である。現在SPART望遠鏡の観測棟は、一般の来訪者が運用の様子を見学できる博物資料館へと改良工事が進められている。この間に、モーターやGM-JT冷凍機のメンテナンス、旧計算機群のLinux化などを平行して実施しており、現在はシャットダウン中であるが、AKATSUKI衛星との連携研究を見据え2016年3月には運用を再開する計画である。本講演では、これらSPARTプロジェクトの一連の取り組みと現状について報告する。