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[PCG21-P13] 表面構造の測色観測による木星大気ダイナミクスの研究
キーワード:木星、大気、測色、大赤斑、分光器、色度図
木星表面には緯度毎に縞(Belt)、帯(Zone)と呼ばれる特徴的な縞模様が複数存在し、その境界にはオーバルと呼ばれる大小様々なスケールの渦が維持生成されている。オーバルの中には同時期・同緯度で発生したにも関わらず白色や赤褐色といった異なる色を持つものや、オーバル同士の相互作用の結果、みかけの色が変化するものも観測されている。各種構造の色の違いや変動は雲頂高度の違いや、雲に含まれる元素成分の違いなどに起因するなどと言われているが、詳しいメカニズムは未解明である。そこで、本研究では、スケールの長期変動やより小さい渦とのの相互作用によってその色の変化が報告されている大赤斑(GRS)や、色に経年変化がみられる縞・帯といった木星大気の特徴的な表面構造に着目し、表面構造における「色」の変化から惑星大気ダイナミクスの解明を目指す。刻一刻と激しく変動する木星表面構造の運動と色の変動を定量化するためには、継続的な木星表面の監視が不可欠である。大型望遠鏡を占有し木星の監視を連続的に行うことは限られたマシンタイムの観点から現実的ではないが、木星表面の精緻な構造を捉えたカラー画像に関しては、世界各地のアマチュア天文家によって報告されている膨大なデータを有効に活用できる可能性がある(例えば月惑星研究会のアーカイブ:http://zetta.jpn.ph/Alpo/latest/index.html)。これらの画像は、異なる光学系とイメージセンサーによって撮像された上に、画像の処理系の違いも加わり色彩の定量的な相互比較は一般的には困難である。しかし、カラー画像のホワイトバランスを統一調整するための参照スペクトルが同時に存在すれば、世界各地で得られたカラー画像の色彩を直接比較可能な状態に補正することが可能になると考えられる。そこで、本研究では木星の表面構造の任意の部分をピンポイントで分光観測可能な分光システムを開発した。このシステムは、天体望遠鏡等で集光した光の一部をCCDカメラに結像し、大部分を分光器に入射させることにより、イメージと分光データが同時に取得可能である。コリメーターを用いた較正実験により、CCD素子上のどの位置が分光範囲に対応するかを明らかにすれば、惑星表面の空間構造を分解した分光観測が可能である。また、装置自体は小型かつ可搬であり、公共の天文台等の有する天体望遠鏡などへ容易に取り付けが可能である。そこで、本研究では本装置を川崎市宙と緑の科学館の所有する口径40㎝の反射望遠鏡と組み合わせ、2015年12月には木星表面構造の分光観測を実施した。本講演では、分光システムの較正実験結果および、木星表面の分光観測結果と色度図を用いた色彩の定量化の手法について紹介する。