15:00 〜 15:15
[PEM03-15] An analysis on the momentum budget in the MLT region based on satellite and whole atmosphere model data
キーワード:Middle atmosphere, Rossby wave, Gravity wave, Barotropic / baroclinic instability, Momentum budget
中層大気には重力波・潮汐波・ロスビー波の大気波動が卓越しており、これらの波と大規模場が相互作用することで、放射平衡とは異なる気候場を形成している。しかし、これら全ての波を含めた中層大気 (特に中間圏および下部熱圏 (MLT) ) の運動量収支はまだ十分解明されていないのが現状である。そこで本研究では、MLT領域における運動量収支と各波動成分の寄与を明らかにするため、衛星観測データと全大気モデルデータを用いた詳細な解析を行なった。ここで、大気内部における負の北向き渦位勾配 (順圧・傾圧不安定の必要条件) の形成に関するロスビー波と重力波の共働にも着目した。解析は、東西平均子午面断面における各月のクライマトロジーを中心に行なった。衛星観測データとしては、Aura MLSの気温とジオポテンシャルハイト (MLSデータ) を、全大気モデルデータとしては、中性大気モデルと電離大気モデルを結合させたGAIAモデルの中性大気のデータ (GAIAデータ) を用いた。解析期間は、2004年8月8日~2015年6月19日の約11年である。
まず、MLSデータの解析を行なった。両半球とも、夏半球中間圏の低緯度から中緯度にかけてと、冬半球中間圏の高緯度に、渦位 (PV) の絶対値の極大 (渦位極大) が存在することがわかった。この渦位極大の極側には、順圧・傾圧不安定の必要条件 (等温位面におけるPVの北向き勾配が負; PVy < 0) を満たす領域が存在する。東西平均からの偏差を擾乱とし、この擾乱に伴うEPフラックス (EPF) とEPフラックス発散 (EPFD) を計算したところ、特に夏半球中間圏において渦位極大領域の上で強い上向きのEPFが見られることが確認できた。さらに、EPFDが正、PVyが負となる頻度の分布はよく対応することがわかった。この特徴は、中間圏の渦位極大から上向きにロスビー波が放射されていることを示唆する。
次に、GAIAデータを用いて成層圏~下部熱圏の運動量収支解析を行なった。まず、MLSデータの解析結果との比較により、GAIAモデルが現実的な場を再現していることを確認した。そこで、EPFを潮汐波成分・ロスビー波成分・重力波成分に分けて解析した。
ロスビー波成分については、夏半球中間圏のPVyが負となる領域においてEPFDが正となっていた。この正のEPFD域より上の領域で見られる強い上向き・赤道向きEPFは下部熱圏まで達していた。次に、この上向きEPFを伴う波の構造を調べた。ジオポテンシャルのスペクトル解析を行なったところ、周期約1.8日、東西波数s = 2~4の西向き伝播波が卓越することがわかった。これは、観測でよく知られている準2日波の特徴とよく一致する。また、PVy < 0の上の領域から強い上向き・赤道向きEPFが見られる特徴は、この波が傾圧・順圧不安定により発生したことを示唆する。
次に、重力波成分については、MLT領域において、EPFDは全体的に夏半球で正、冬半球では負であった。EPFの向きから夏半球では東向き、冬半球では西向き伝播波が卓越していることがわかった。夏半球のMLT領域での、東向き伝播を示す下向きEPFはPVyが負の領域の上で特に大きくなっていた。そこでこの領域でのリチャードソン数 (Ri) を調べたところ、1/4以下となる頻度が高いことがわかった。これは、この東向き重力波がシア不安定によって発生した可能性を示唆する。
ロスビー波成分、重力波成分、潮汐波成分をあわせた解像されるすべての波強制は、MLT領域において夏半球で主に正、冬半球では負であり、重力波成分の寄与が大きいことがわかった。
この研究で用いたGAIAモデルの水平分解能は粗いため、サブグリッドスケールの重力波による強制 (GWFP) はパラメタリゼーションにより組み入れられている。GWFPの大きさは、両半球とも中間圏上部高度約90 km付近で極大となっていた。また、MLT領域においてGWFPは卓越する高度域がやや異なるが、大きさとしてはモデルで解像される全波動によるEPFDと同程度であることがわかった。
最後に、GWFPとPVyが負の領域との関係について詳しい解析を行なった。まず、GWFPは夏半球中間圏で低緯度と高緯度に東向きのピークを、冬半球中間圏で西向きのピークを持ち、これらのピークは渦位極大と対応していた。また渦位極大は、冬半球ではN2の、夏半球ではN2と相対渦度ζθの両方の増大が寄与していることがわかった。さらに本研究では、より直接的にGWFPによる渦位の時間変化を見積もった。この解析により、GWFPが渦位極大を形成するように働いていることが明らかになった。
まず、MLSデータの解析を行なった。両半球とも、夏半球中間圏の低緯度から中緯度にかけてと、冬半球中間圏の高緯度に、渦位 (PV) の絶対値の極大 (渦位極大) が存在することがわかった。この渦位極大の極側には、順圧・傾圧不安定の必要条件 (等温位面におけるPVの北向き勾配が負; PVy < 0) を満たす領域が存在する。東西平均からの偏差を擾乱とし、この擾乱に伴うEPフラックス (EPF) とEPフラックス発散 (EPFD) を計算したところ、特に夏半球中間圏において渦位極大領域の上で強い上向きのEPFが見られることが確認できた。さらに、EPFDが正、PVyが負となる頻度の分布はよく対応することがわかった。この特徴は、中間圏の渦位極大から上向きにロスビー波が放射されていることを示唆する。
次に、GAIAデータを用いて成層圏~下部熱圏の運動量収支解析を行なった。まず、MLSデータの解析結果との比較により、GAIAモデルが現実的な場を再現していることを確認した。そこで、EPFを潮汐波成分・ロスビー波成分・重力波成分に分けて解析した。
ロスビー波成分については、夏半球中間圏のPVyが負となる領域においてEPFDが正となっていた。この正のEPFD域より上の領域で見られる強い上向き・赤道向きEPFは下部熱圏まで達していた。次に、この上向きEPFを伴う波の構造を調べた。ジオポテンシャルのスペクトル解析を行なったところ、周期約1.8日、東西波数s = 2~4の西向き伝播波が卓越することがわかった。これは、観測でよく知られている準2日波の特徴とよく一致する。また、PVy < 0の上の領域から強い上向き・赤道向きEPFが見られる特徴は、この波が傾圧・順圧不安定により発生したことを示唆する。
次に、重力波成分については、MLT領域において、EPFDは全体的に夏半球で正、冬半球では負であった。EPFの向きから夏半球では東向き、冬半球では西向き伝播波が卓越していることがわかった。夏半球のMLT領域での、東向き伝播を示す下向きEPFはPVyが負の領域の上で特に大きくなっていた。そこでこの領域でのリチャードソン数 (Ri) を調べたところ、1/4以下となる頻度が高いことがわかった。これは、この東向き重力波がシア不安定によって発生した可能性を示唆する。
ロスビー波成分、重力波成分、潮汐波成分をあわせた解像されるすべての波強制は、MLT領域において夏半球で主に正、冬半球では負であり、重力波成分の寄与が大きいことがわかった。
この研究で用いたGAIAモデルの水平分解能は粗いため、サブグリッドスケールの重力波による強制 (GWFP) はパラメタリゼーションにより組み入れられている。GWFPの大きさは、両半球とも中間圏上部高度約90 km付近で極大となっていた。また、MLT領域においてGWFPは卓越する高度域がやや異なるが、大きさとしてはモデルで解像される全波動によるEPFDと同程度であることがわかった。
最後に、GWFPとPVyが負の領域との関係について詳しい解析を行なった。まず、GWFPは夏半球中間圏で低緯度と高緯度に東向きのピークを、冬半球中間圏で西向きのピークを持ち、これらのピークは渦位極大と対応していた。また渦位極大は、冬半球ではN2の、夏半球ではN2と相対渦度ζθの両方の増大が寄与していることがわかった。さらに本研究では、より直接的にGWFPによる渦位の時間変化を見積もった。この解析により、GWFPが渦位極大を形成するように働いていることが明らかになった。