日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM04] Space Weather, Space Climate, and VarSITI

2016年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*片岡 龍峰(国立極地研究所)、プルキネン アンティ(NASAゴダード宇宙飛行センター)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、浅井 歩(京都大学宇宙総合学研究ユニット)、陣 英克(情報通信研究機構)、佐藤 達彦(日本原子力研究開発機構)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、宮原 ひろ子(武蔵野美術大学造形学部)、伊藤 公紀(横浜国立大学大学院工学研究院)、塩川 和夫(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、中村 卓司(国立極地研究所)、余田 成男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、一本 潔(京都大学大学院理学研究科附属天文台)、石井 守(国立研究開発法人情報通信研究機構)、座長:片岡 龍峰(国立極地研究所)

15:30 〜 15:45

[PEM04-28] New solar radio telescope of NICT and its space weather forecasting

*岩井 一正1久保 勇樹1石橋 弘光1亘 慎一1石井 守1 (1.情報通信研究機構)

キーワード:Sun, solar rasio burst, space weather forecasting, solar energetic particle, radio observation

太陽ではフレアに代表される爆発現象が絶えず起きている。この爆発現象に伴い、高エネルギー粒子(SEP)や、コロナ質量放出現象(CME)が発生する。これらの一部は地球にも到来し、人工衛星の運用や電波通信に大きな影響を与えることがある。太陽の爆発現象では突発的な電波が放射される(太陽電波バースト)。電波は粒子よりも早く伝搬するため、太陽電波バーストを定常的に観測することは、宇宙天気の予報にとって極めて有効である。
NICTでは太陽活動を監視することを目的に茨城県平磯にて太陽の電波観測を行ってきた。今回、より高性能な太陽電波の広帯域分光観測を目指し、観測場所をNICTの山川電波観測施設(鹿児島県指宿市)に移転するとともに、新しい太陽電波望遠鏡の開発を行った。本望遠鏡は、口径8メートルのパラボラアンテナからなる。太陽電波バーストはメートル波からマイクロ波にかけて発生する広帯域の連続波放射である。本望遠鏡は焦点に2種類の広帯域アンテナを用いることで、0.07GHzから9.0GHzまでを1台のアンテナでカバーしている。太陽の視直径は約0.5度あり、太陽フレアはどこで発生するか事前の予報が難しいため、望遠鏡は太陽全面の視野を持つ必要がある。そこで高周波側のアンテナ位置をデフォーカスすることで、観測する全帯域で太陽全面の視野を確保した。受信信号は受信機内で分割され、FPGAを用いたデジタル分光計に供給される。本望遠鏡に開発されたデジタル分光計は、帯域幅2GHz・分光点数4096点と、帯域幅1GHz・分光点数32768点の2種類があり、合計10台で9GHzの帯域幅の両円偏波同時観測を実現した。分光計はデッドタイム無く連続的に分光可能で、スペクトルは内部で積算され、8ms毎に積算スペクトルを記録することで、高時間分解観測を可能とした。本装置の広帯域な感度特性は、様々な周波数で発生する電波バーストの観測に有効であり、宇宙天気現象の検出精度向上に大いに活用できること考えられる。また、本装置の高分解なスペクトルデータは、太陽電波バーストに含まれる微細なスペクトル構造を分解可能であり、フレアにおける非熱的粒子の生成過程の解明につながる成果も期待される。