日本地球惑星科学連合2016年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM08] Inner magnetosphere: Latest results and new perspectives

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*Summers Danny(Dept of Math and Stats,Memorial University of Newfoundland)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

17:15 〜 18:30

[PEM08-P08] Study on characteristics of drift resonance between outer radiation belt electrons and a monochromatic Pc5 wave based on GEMSIS-RC and RB simulations

*神谷 慶1関 華奈子2齊藤 慎司1天野 孝伸3三好 由純1松本 洋介4梅田 隆行1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.東京大学理学研究科、3.東京大学地球惑星科学専攻、4.千葉大学理学研究科)

キーワード:Radiation belt electrons, Drift resonance, GEMSIS-RC and RB

地球内部磁気圏の電子放射線帯外帯には、磁気圏内で加速されたと考えられる相対論的電子が捕捉されている。こうした増減を引き起こす放射線帯電子の加速機構には、大別して外部供給説と内部加速説がある。このうち外部供給説は、Pc5帯 (周期5 - 10 分)のULF波動と地球磁場中での電子のドリフト運動の共鳴が引き起こす動径方向輸送による加速機構であり、電子の第1, 2断熱不変量が保存された状態で、第3断熱不変量が破られることにより、電子が磁場の強い地球方向へ輸送され断熱的にエネルギーを得るメカニズムである。従来、外部供給説は拡散的に電子を輸送すると考えられていたため、特定の第一断熱不変量を持つ電子の位相空間密度の動径方向分布がピークを持たないことが外部供給説の同定と内部加速説との観測的な切り分けに使われてきた(Reeves et al., 2013)。一方で、Pc5波動の性質によってはドリフト共鳴による電子の動径方向への輸送が、電子の位相空間密度の動径方向分布に局所的なピークを生成しうることが指摘されている(Degeling et al., 2008)。これは、従来の放射線帯電子加速機構の観測的な切り分けに疑問を投げかけており、Pc5波動と相対論的電子の相互作用の基本的性質を理解する必要性を示している。これらを踏まえ、本研究の目的は、独自の数値シミュレーションモデルに基づき、単色ポロイダルPc5波動と電子の相互作用に着目して、ドリフト共鳴とそれによって引き起こされる動径方向輸送の基本的な性質を明らかにすることである。
本研究では、内部磁気圏の2つのシミュレーションモデル : GEMSIS-RC(Ring Current : 環電流)と RB(Radiation Belt : 放射線帯)モデルを組み合わせている。GEMSIS-RCは、第1断熱不変量保存を仮定した5次元位相空間において、環電流イオンのドリフト運動論近似したボルツマン方程式と電磁場の時間発展を記述するマクスウェル方程式を同時に解くことができる、内部磁気圏のグローバル数値シミュレーションモデルである(Amano et al., 2011)。GEMSIS-RBは、任意の電磁場構造において相対論的電子の旋回中心近似した運動方程式を解くテスト粒子シミュレーションコードである(Saito et al., 2010)。本研究では、GEMSIS-RCコードで単色Pc5波動のシミュレーションを行い、得られた内部磁気圏内のグローバルな電磁場変動をGEMSIS-RBコードの背景電磁場としてインプットすることで多数の相対論的電子の軌道を計算した。このことにより、Pc5波動による放射線帯電子の動径方向輸送が電子のエネルギー、ピッチ角などにどのように依存するかを定量的に評価することができるのが本研究の特徴である。具体的には、周期が300秒の典型的な単色Pc5波動に対するシミュレーションを行い、電子が共鳴する位置やその動径方向への輸送量、また電子のエネルギーやピッチ角といったパラメータ依存性を解析し、定量的な考察を行った。その結果、ドリフト共鳴による動径方向への輸送は、非線形効果による有限共鳴幅を持ち、ピッチ角が90°の電子よりもバウンス運動を伴うピッチ角の小さい電子の方が高い輸送効率を持つことが明らかとなった。これは、電子が第1, 2断熱不変量の保存下で動径方向に輸送された場合、それに伴ってピッチ角が90°に近づくことによって、動径方向輸送に対する電子のドリフト周期の変化率が緩やかになり、単色Pc5波動との共鳴幅に入る時間が長くなることが原因であると考えられる。