日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM09] Study of coupling processes in solar-terrestrial system

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*山本 衛(京都大学生存圏研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、小川 泰信(国立極地研究所)、橋口 浩之(京都大学生存圏研究所)、吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

17:15 〜 18:30

[PEM09-P01] Development of MU radar real-time processing system with adaptive clutter rejection

*橋口 浩之1万城 孝弘1山本 衛1佐藤 亨2西村 耕司3橋本 大志2 (1.京都大学生存圏研究所、2.京都大学情報学研究科、3.国立極地研究所)

キーワード:Atmospheric radar, Clutter rejection, NC-DCMP method, MU radar

大気レーダー観測において、しばしば強いクラッターエコー(山や建物からのエコー)が問題になることがある。そのクラッター抑圧法としてNC-DCMP (Norm Constrained-Directionally Constrained Minimum Power)法が提案され、MUレーダーによる実観測データに適用し、効果があることが実証されている[Nishimura et al., JTech., 2012]。この処理は、これまではオフラインで実施されていた。そこで本研究では、NC-DCMP法によるクラッター抑圧処理をMUレーダーのオンライン処理システムとして実装することを目的とする。これにより、観測データの記録容量を数百分の1に削減でき、外部記憶装置などの制約の少ない標準観測を行うことが可能になる。NC-DCMP法では、所望信号方向を固定した上で、ウエイトベクトルのノルムをある値以下に制約して、信号電力を最小化するように制約条件付最適化問題を解く。
MUレーダーでは30年以上に渡って、毎月100時間程度の対流圏・成層圏標準観測モードによる観測を継続している。まず、この標準観測モードにNC-DCMP処理を実装した。このモードでの観測データは8秒に1回取得される。そのため、実時間でクラッター抑圧を行うためには全ての信号処理を8秒以内に行う必要があるが、処理方法の工夫により、NC-DCMP法の処理時間を平均1.0秒にまで高速化した。山や建物からのエコーは時間的に大きく変化しないため、インコヒーレント積分7回分(約1分間)の受信信号を用いて最適ウエイトベクトルを求めるようにしたところ、良好な結果を得た。2015年11月の標準観測からNC-DCMP処理を適用しているが、安定運用できている。完全ではないが、航空機からのエコーについても、抑圧する効果が得られている。
インドネシア共和国の西スマトラに建設が計画されている赤道MUレーダーは、八木アンテナ19本を1群とする55群構成で、各群からの受信信号を独立に取得可能なシステムが提案されている。本研究の成果は、この赤道MUレーダーにも適用可能である。