日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 106 (1F)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:西岡 未知((独)情報通信研究機構)

11:45 〜 12:00

[PEM16-05] アラスカのGPS受信機網で観測された中規模伝搬性電離圏擾乱の生成機構

溝口 拓弥1、*大塚 雄一1塩川 和夫1西岡 未知2津川 卓也2 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.情報通信研究機構)

キーワード:電離圏、伝搬性電離圏擾乱、GPS

我々の先行研究では、アラスカと北欧に存在するGPS受信機網から得られたデータを用いて作成した全電子数 (Total Electron content; TEC) 変動の水平二次元分図 (時間分解能は30秒、空間分解能は約80 km四方) を調べることで、2012年のアラスカ上空及び2008年の北欧上空における中規模伝搬性電離圏擾乱 (Medium-Scale Traveling Ionospheric Disturbance; MSTID) の発生頻度、伝搬方向、周期、水平波長及び水平位相速度に関する統計的な性質を明らかにした。観測されたこれらの高緯度におけるMSTIDは、発生頻度の極大に着目すると3つのパターンに分類することができ、それぞれ、アラスカと北欧における冬季の昼間、北欧における夏季の夜間、アラスカにおける冬季の昼間から日没付近となる。アラスカと北欧で冬季の昼間に発生したMSTID及び北欧で夏季の夜間に発生したMSTIDは、発生頻度の季節・地方時変化や伝搬方向の統計的な性質が、日本や南カリフォルニアなどの中緯度帯におけるMSTIDと一致していた。一方で、アラスカにおいて冬季の昼間から日没付近に発生していたMSTIDは、これまで中緯度では観測されていない特徴をもつ。本講演では、このMSTIDについて、中緯度で従来から言われているメカニズムによって発生するかどうか、電気力学及び中性大気力学の2つの観点から考察を行った結果を発表する。
まず、電気力学的観点において、高緯度では磁力線が鉛直に近いため、高度方向のプラズマ変動が起こりにくく、分極電場によるE×Bドリフトでは電子密度変動の振幅が小さくなることが分かった。そこで、この電子密度変動の振幅を、Es層の電場が磁力線を介してF層に伝わることで増大させ、MSTIDとして観測されるまでに至るという発生メカニズムを考察した。この理論では、磁気共役点においてMSTIDの発生地方時が一致する必要があるが、アラスカと磁気共役の関係にあるニュージーランドにおける先行研究の結果と比較したところ、MSTIDの発生地方時は一致していなかった。すなわち、アラスカにおけるMSTIDが電気力学的なメカニズムで発生しているとは考えづらいという結論に至った。
次に、中性大気力学的観点において、オーロラ活動によって大気重力波が励起され、MSTIDとして観測されるという考えに基づき、電離圏電子密度の擾乱の指標であるROTI (Rate Of TEC change Index)、地磁気活動度の指標であるAE指数及びKp指数とMSTIDの発生頻度を比較したが、明確な対応は見られず、MSTIDとオーロラ活動との関係は殆どないと言える。
これらのMSTIDの波源を同定すべく、大気重力波のレイトレーシングを行った結果、34イベント中24イベントが対流圏の高度10 kmまで到達した。すなわち、対流圏の高度10 kmで励起された大気重力波が、電離圏の高度300 kmまで到達し、MSTIDとして観測されている可能性が高いことが明らかになった。また、いくつかのケースでは成層圏等でレイトレースができなくなった。それより下層からは大気重力波が伝搬してこられないため、成層圏における現象 (極渦の活動等) がMSTIDの成因に効いている可能性も考えられる。今後、大気重力波の励起源をより詳しく調べることで、高緯度におけるMSTIDの発生メカニズムの描像をより明らかにする必要があるだろう。