日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 106 (1F)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:西岡 未知((独)情報通信研究機構)

12:00 〜 12:15

[PEM16-06] 熱圏中性風計測に向けたSrおよびBa共鳴散乱光の高精度スペクトル解析

*齋藤 耕1柿並 義宏1山本 真行1 (1.高知工科大学)

キーワード:ストロンチウム、共鳴散乱、熱圏

1. はじめに
我々はJAXA他と共同し, 観測ロケットからのリチウム放出によって熱圏希薄大気中における風速プロファイルの計測技術を開発してきた. 2014年11月にノルウェーにて観測ロケット放出バリウム(Br)およびバリウムイオン(Br+)の共鳴散乱光を観測し, 高度 150~400 kmの熱圏中性風およびイオンドリフトの観測が行われた.また, 日本は将来的にストロンチウム(Sr)を用いて同様の計測を実施予定であり, その予備実験として2014年9月に群馬県内にてSr放出装置を用いた地上実験が行われた. この両方の実験から得たSrおよびBa共鳴散乱光の画像から行ったスペクトル解析の結果と, SrおよびBaの放出検証について報告する.
2. スペクトル解析
本実験のスペクトル観測方法として, ノルウェーで行われたロケット実験の地上観測では回折格子(500 line/mm)をレンズ前面に装着したカメラ(Nikon D700)によりスペクトルを観測した. Sr放出地上模擬実験では同回折格子を装着したビデオカメラ(SONY DCR-PC101)とファイバ入力型分光光度計を用いて観測した. それぞれの観測で得られた分光画像の1次回折光が写る画像をIDL (Interactive Data Language)言語を用いて作製した画像処理ソフトウェアを用いてスペクトル断面の輝度分布を読み取り画像上の各ピクセルにおける輝度値をグラフ化した. 次に, 較正用光源として理科教材用の小型放電装置を使用しアルゴン(Ar)放電管によるArガスの輝線スペクトルを分光カメラおよび分光ビデオカメラで撮影した. 撮影より得られたArスペクトル画像から基準となる輝線波長を複数取得し, グラフ化したSrおよびBa共鳴散乱光の輝度分布の波長を較正した. また,ファイバー入力型分光光度計では単位時間の空間積分スペクトル強度を得ることができ, Sr発光時のデータを解析した.
3. スペクトル解析結果および考察
ノルウェーでのロケット実験で得られた分光画像のスペクトル解析から, 波長455 nm, 557 nm, 610 nm~661nmの発光スペクトルを確認した. Br+およびBa発光の文献値の波長である455 nmおよび553 nmと非常に接近した値を本解析により得た. Sr地上実験の分光画像および分光光度計のスペクトル解析から波長460 nmの発光スペクトルを確認でき, Sr発光の文献値である460.7 nmに同定できると考えられる. 複数のスペクトル断面を積分することで非常に微弱なSr 460.7 nmの立ち上がりを明瞭に検出できた. 分光光度計の解析からは, Sr放出の際のテルミット反応によるものと考えられる635 nm, 644 nm, 656 ~659 nmの鉄(Fe), アルミニウム(Al), および668 nm~671 nmの 酸素分子(O2)のスペクトルを確認した.
4. まとめ
ノルウェー観測ロケット実験で得られた分光画像より波長455 nm, 557 nmの発光を確認でき, Br+およびBaのスペクトルに同定され, Ba放出ならびにイオン化とそれぞれの発光を確認できた. またSr地上模擬実験で得られた分光画像および分光光度計の時空間積分スペクトルデータでは460.7 nm付近で輝度ピークを確認しておりSr放出および発光が確認できたと結論される.