日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 106 (1F)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:大山 伸一郎(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、横山 竜宏(情報通信研究機構)

15:00 〜 15:15

[PEM16-12] JEM-GLIMS直下視観測から同定したスプライトの水平空間分布と親雷放電との関係

*佐藤 光輝1足立 透2佐藤 剛志3牛尾 知雄4森本 健志5鈴木 睦6山崎 敦6高橋 幸弘1 (1.北海道大学 大学院理学研究院、2.気象研究所、3.北海道大学 大学院理学院、4.大阪大学 工学研究科、5.近畿大学 理工学研究科、6.宇宙科学研究所)

キーワード:雷、高高度放電発光現象、国際宇宙ステーション

JEM-GLIMSは,国際宇宙ステーション(ISS)から雷放電・高高度放電発光現象(TLEs)の直下視観測を2012年11月に開始し,2015年8月に完了した。約3年間の軌道上観測期間において,合計8357例の雷放電,699例のTLEsの検出に成功した。JEM-GLIMSの光学観測データおよび地上雷放電観測データの解析から,699例のTLEsのうち42例がスプライト,508例がエルブスであると同定した。スプライト観測データの詳細解析によって,(1) 42例全てにおいて,スプライトは親雷放電発生から約1 msの遅延時間をもって発生すること(短遅延型スプライト),(2) スプライトの発光は親雷放電発光の上空付近で発生していること,などが明らかとなった。しかしながら,スプライトの発光位置は,親雷放電のピーク発光位置からは厳密にはずれており,その空間偏差の中央値と平均値はそれぞれ13.6 km, 13.3 kmとなることが判明した。親雷放電の発光ピーク位置が帰還雷撃点に一致すると仮定すると,この結果は,Lu et al. [JGR, 2013]の先行研究で示されている「短遅延型スプライトは親雷放電の帰還雷撃点から30 km以内で発生する」という結果に整合する。このことは,(1) 雷放電によって雷雲内で中和される電荷の中心領域が帰還雷撃点から10 km程度変位している,もしくは,(2) 電荷中和領域は帰還雷撃点に一致するが,スプライト発生高度にあらかじめスプライトを容易に発生させる"種"が形成されていた,という2つの可能性を示唆する。講演では,JEM-GLIMSによって観測されたスプライトの空間分布と親雷放電との空間偏差を詳細に示すと共に,空間偏差が生じる原因について議論する。