日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)

17:15 〜 18:30

[PEM16-P08] スポラディックE層内の電子温度減少に関する数値的検討

*坂本 優美花1阿部 琢美2三宅 亙1 (1.東海大学大学院工学研究科航空宇宙学専攻、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

キーワード:観測ロケット、スポラディックE層

スポラディックE層は古くから研究・観測されてきた.その生成機構についてはwind-shear理論が一般に受け入れられているが,この理論は電子密度の集積過程を説明するに留まり内部の熱エネルギー収支についてはほとんど情報を与えない.更に,電子温度は電離圏の熱エネルギー収支を議論する上で重要なパラメータであるが,過去にはスポラディックE層内で十分に信頼性のある電子温度観測データは数えるほどしか得られてこなかった.このように,スポラディックE層内の電子温度情報は限られた報告例しか存在せず,内部での熱エネルギー収支に関する議論は非常に少ない.
下部電離圏に発生するスポラディックE層の空間構造解明を主目的として,平成26年8月17日19時10分00秒(日本標準時)に観測ロケットS-520-29号機が宇宙航空開発機構内之浦宇宙空間観測所より打ち上げられた.このロケットには高速サンプリングが可能なラングミュアプローブが搭載されており,且つ新たな解析方法を導入したことによってこれまでの観測よりも細かな時間(空間)間隔で,スポラディックE層内の電子密度・温度の空間構造の推定が可能になった.その結果として,電子密度が増加するスポラディックE層内における電子温度の変化がはっきり示され,外部との境界付近から中心に向って温度が次第に減少していく傾向が明らかになった.
本研究では,観測結果として得られたスポラディックE層内での電子温度低下がどのようなメカニズムによるものか議論するために,数値的に検討を行っている.90~120 kmにおける高度で,スポラディックE層を含む鉛直方向の一次元空間で電子,イオン,中性粒子を与え,電子に関するエネルギー方程式を使用して電子温度分布についての数値計算を行った.今回の計算では,高度100kmにスポラディックE層が存在すると想定し,この層内で最大電子密度が背景に対して10倍,20倍,30倍に増加した場合の電子温度分布を求めた.加熱過程としては光電子による加熱とジュール加熱,冷却過程としては中性大気およびイオンとの相互作用による過程を考慮している.その結果,電子密度が高くなるにつれて,背景に対する電子温度の減少幅が徐々に大きくなっていく傾向が見られた.更に,イオン密度や電場等のパラメータを変化させ,どのような条件で電子温度の変化量が大きくなるかを検討した.本発表では,これらの検討結果についての報告を行う.