日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 302 (3F)

コンビーナ:*梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、中村 匡(福井県立大学)、杉山 徹(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球情報基盤センター)、座長:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、中村 匡(福井県立大学)

13:45 〜 14:00

[PEM17-01] ランダウ減衰の非可逆性

*中村 匡1 (1.福井県立大学)

キーワード:ランダウ減衰、プラズマ波動、無衝突プラズマ

ランダウ減衰はプラズマ運動論の中で基本的な素過程のひとつであり、ほとんど全てのプラズマ物理の教科書でくわしく扱われている。しかしながら、その正確な意味については、いくつかの誤解があり、教科書の記述もまちまちである。講演者は2015年度秋のSGEPSS講演会でランダウ積分路に関する混乱について報告したが、今回はその可逆性について議論する。
多くの教科書では、ブラソフ方程式に衝突項がないため、無衝突プラズマで起こる現象は可逆であると解説している。そして、その例としてランダウ減衰をあげ、プラズマエコーによって波動を再現できることから、情報が失われていないという議論をしている。しかしながら、「可逆」という言葉を字義通り、つまり「時間逆転をした過程が実際に起こりうる」という意味に解釈すると、プラズマエコーは可逆の証拠ではない。プラズマエコーが先におこり、それを放置しておくと初期状態にもどるような現象は起こらないからである。
講演では近年の統計力学の知見をもとに「不可逆」の意味を考え、ランダウ減衰も普通の不可逆現象と本質的に同じ意味で不可逆であることを示す。この観点からみると、プラズマエコーでは散逸が起こってないのではなく、実空間の散逸と同じタイムスケールで速度空間内の散逸が起こっているため、一見情報が失われてないようにみえると説明できる。