日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM18] 磁気圏-電離圏ダイナミクス

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、田中 良昌(国立極地研究所)、中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波計測研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、中野 慎也(情報・システム研究機構 統計数理研究所)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

17:15 〜 18:30

[PEM18-P13] 音声信号処理によるVLFエミッションの雑音除去

*出島 工1尾崎 光紀2八木谷 聡2塩川 和夫3三好 由純3三好 正人2平野 晃宏2Connors Martin4 (1.金沢大学 理工学域 電子情報学類、2.金沢大学 理工研究域、3.名古屋大学 宇宙地球環境研究所、4.アサバスカ大学)

キーワード:VLFエミッション、雑音除去、音声信号処理

磁気圏で観測されるVLFエミッションは、脈動オーロラ(数十keV~100 keV)の発生や放射線帯MeV電子など高エネルギー粒子のピッチ角散乱や加速に大きく寄与している。我々は磁力線で放射線帯とつながるカナダのアサバスカ(L=4.3)にてVLFエミッション(100 Hz~数十kHz)の地上連続観測を行っている。地上観測は、固定のL値で現象を高い時間分解能で連続観測できる利点がある。しかし、VLFエミッションの他に観測機器や伝搬経路で生じた雑音が観測波形に含まれる欠点がある。
本研究では、VLFエミッションが可聴周波数帯域で生じる現象であることに着目し、音声信号処理技術を用いて観測波形に含まれる雑音の除去に関して検討を行った。観測データには、定常雑音(白色雑音やライン雑音等)とパルス性雑音(空電雑音や機器のクロック雑音等)が含まれている。定常雑音を除去するために、音声信号処理で用いられるスペクトルサブトラクション(SS)法と変調周波数分析(MFA)に基づく方法の二つを検討した。SS法は事前に雑音スペクトルを推定し、周波数領域で雑音成分を除去する手法である。本研究では、事前雑音スペクトルを推定するために、スペクトルエントロピー法を用いて定常雑音区間と信号区間を区別した。MFAに基づく方法は、事前雑音スペクトルを必要とせず、信号の振幅スペクトルの時間方向変化を計算し、その直流成分を除去することで定常雑音を取り除いた。コーラス波動を模擬したチャープ信号(2~4 kHz)に定常雑音を付加し、SS法とMFAによるシミュレーションを行った結果、どちらもSNRが0 dBから10 dBに改善される結果を得た。
これらの雑音除去手法を用いて、実観測データに適用した結果、VLFエミッションの一種であるコーラス波動と雑音の含まれる観測信号はコーラス成分を残して雑音を除去できた。これに対し、VLFエミッションの一種であるヒス波動の含まれる観測信号は、雑音だけでなくヒス波動の存在している部分も除去されていることがわかった。これは、ヒス波動が熱雑音に似たスペクトル構造をしているため、定常雑音とみなされたものと考えられる。ヒス波動を信号成分として雑音と区別するために、ヒス波動は右回りの偏波成分をもつ性質を利用した。その結果、ヒス波動を残して定常雑音を除去することができた。
本発表では音声信号処理によるVLFエミッションの雑音除去について詳細に報告する予定である。従来のEMC試験などのコストを信号処理により大幅に削減できることに貢献できると考えている。