日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS01] Outer Solar System Exploration Today, and Tomorrow

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*木村 淳(東京工業大学地球生命研究所)、藤本 正樹(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、笠羽 康正(東北大学大学院 理学研究科 地球物理学専攻)、佐々木 晶(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、谷川 享行(産業医科大学医学部)、関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、Sayanagi Kunio(Atmospheric and Planetary Sciences Department, Hampton University)、Vance Steven(Jet Propulsion Laboratory, Caltech)

17:15 〜 18:30

[PPS01-P10] time variation of 130.4nm atomic oxygen emission near Io observed by hisaki/EXCEED

*古賀 亮一1土屋 史紀1鍵谷 将人1坂野井 健1米田 瑞生1吉川 一朗2吉岡 和夫2村上 豪3山崎 敦3木村 智樹4 (1.東北大学惑星プラズマ・大気研究センター、2.東京大学、3.宇宙科学研究所、4.理化学研究所)

キーワード:Jupiter, Io, hisaki/EXCEED, volcanic activity

木星の衛星イオは他のガリレオ衛星と比べて木星との距離が近く、潮汐力を受けるため地質活動が活発である。イオ大気の主成分はSO2や解離してできた酸素や硫黄原子などで、残りの数パーセントが中性ナトリウムやカリウムである。この大気の起源は火山活動によるガスの噴出と表面に堆積された SO2frostの昇華が考えられ、どちらが支配的かはまだ決着が着いていない。本研究ではイオ周辺(1木星半径程度)の130.4nmの酸素原子発光強度の時間変動を明らかにすることで、大気生成プロセスの理解に寄与することを目的とする。
2014年の12月から2015年の5月にかけて地上狭帯域イメージング観測により広域ナトリウム雲の発光の増大が観測された(Yoneda et al., 2015)。この期間に火山噴出ガスの主成分である酸素原子のイオ周辺での振る舞いを明らかにするため、本研究では同時期のひさき衛星観測データを用いて、イオの1木星半径周辺の酸素原子130.4nm発光強度の時間変動を解析した。解析では、十分なS/Nを得るために、イオが朝側(イオ位相角45~135度)と夕方側(イオ位相角225~315度)にいる時の観測データをイオを中心とした60"の空間範囲について一日ごとに積算した。また、ジオコロナ起源の酸素原子発光の影響を回避するため、ひさき衛星が地方時20時から4時の観測データのみを使用した。その結果、酸素原子発光は1月上旬は11R程度であったが、1月中旬から増光を開始し、二月中旬には発光のピーク(32R)に達した後、4月末まで減光して平穏時の明るさ(10R)に戻った。また、dawn側よりdusk側の明るさが全体を通して1.2倍程度明るかった。
この解析結果から、イオ火山活動が活発になることでイオ周辺の酸素原子の量が増大することが明らかになった。より定量的に火山活動が大気生成の関係性を議論するためには、ひさき衛星の130.4nm発光強度データから酸素原子柱密度の変動に変換する必要がある。130.4nm酸素原子発光には太陽光の共鳴散乱とイオプラズマトーラスの電子衝突励起の両方が寄与しているが、寄与の大きさを見積もったところ電子衝突励起の方が共鳴散乱より数百倍大きい。プラズマトーラスの電子温度はdusk側が高いことが知られており、酸素原子のdawn-dusk非対称性を説明する上で電子衝突励起が優勢であるという見積もりの結果は整合的である。発表ではこの見積もりの結果から酸素原子柱密度を導出し火山活動の変化によりイオ大気が受けた影響を推定する。