日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月26日(木) 09:00 〜 10:30 104 (1F)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)、座長:竹広 真一(京都大学数理解析研究所)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

09:30 〜 09:45

[PPS11-15] 系外惑星のための雲微物理モデルの開発:地球と木星の雲観測を用いた妥当性検証

*大野 和正1奥住 聡1 (1.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:系外惑星、雲

近年のトランジット観測により、大気分子の吸収線を持たない透過スペクトルを持つ系外惑星が複数発見されてきている。このような透過スペクトルをもつ系外惑星は、分子量の高い大気を持っているか、もしくは高層に光学的に厚い雲を持っているかのいずれかであると一般に解釈される。それぞれの系外惑星に対してどちらの解釈がより妥当であるかを明らかにするためには、現実的な雲モデルが必須である。従来の系外惑星雲モデルは、雲粒子の形成・成長の微物理との関連が明らかでない不定パラメーターを含んでおり、また、雲粒子の衝突合体を素過程に基づいて考慮していない。
我々は大気上層に光学的に厚い雲が形成される条件を調べるために、雲形成の微物理に基づいた雲モデルを開発してきた(惑星科学会2015年秋季講演会)。我々のモデルは雲粒子の凝縮、衝突併合による成長を計算し、雲粒子のサイズ・数密度の鉛直分布を大気上昇速度・凝縮ガスの混合率・雲凝結核の数密度の関数として決定する。
モデルの妥当性を検証するため、地球の水雲と木星のアンモニア雲の観測とモデル計算の比較を行った。地球の場合、我々のモデルは地球の平均的な上昇速度、凝結核数密度、地表の湿度を仮定することで、その場観測された雲粒子の質量密度、数密度の鉛直分布、衛星観測から得られた光学的厚みを再現することが分かった。また木星の場合、上昇速度1.2—2 m/sと凝結核数密度~5×104 m-3を仮定することで、遠赤外観測によって得られた雲粒子の実効半径、光学的厚み、雲の幾何学的厚みが同時に再現されることが分かった。ここで仮定した上昇速度と凝結核数密度は、ガリレオプローブによるその場観測、先行の2次元雲対流計算の結果と整合的である。