日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月26日(木) 09:00 〜 10:30 104 (1F)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)、座長:竹広 真一(京都大学数理解析研究所)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

10:15 〜 10:30

[PPS11-18] 近赤外ドップラー装置IRDによる晩期M型矮星周りの地球型惑星探索

*大宮 正士1,2小谷 隆行2,1田村 元秀3,2,1 (1.国立天文台、2.アストロバイオロジーセンター、3.東京大学)

キーワード:地球型惑星、晩期M型矮星、近赤外ドップラー法

我々は、すばる望遠鏡用太陽系外惑星探索装置IRD(Infrared Doppler instrument)を用いて、晩期M型矮星を公転する地球型惑星の探索を計画している。IRDは、すばる望遠鏡に取り付けることを念頭に製作を進めている天文観測用の近赤外線高分散分光器であり、光周波数コムを用いた波長校正によって近赤外線視線速度精密測定を実現し、ドップラー法での惑星探索を可能とする装置である。本計画は、近赤外線観測での視線速度精密測定を可能とするIRDとすばる望遠鏡の口径の優位性を活かして、他の観測装置ではこれまで困難だった晩期M型矮星のドップラー法による集中的な系外惑星探索を遂行することを目的としている。M型矮星の中でも低温度かつ低質量である晩期M型矮星の周りではハビタブルゾーンが主星に近いため、1m/sの視線速度測定精度が達成できればハビタブルゾーンに位置する地球質量程度の惑星の発見が現実的な観測時間内にて実現可能となる。そのため、この惑星探索では、これまでのドップラー法での惑星探索においてほとんど分かっていなかったハビタブルゾーンに位置する地球質量の惑星を多数発見し、ハビタブル地球型惑星の統計頻度についても迫ることができる。また、地球質量以上の広い質量レンジの惑星に対して検出感度を持ったサーベイを遂行することが可能となり、岩石惑星、氷惑星、ガス惑星を含む惑星系の包括的な理解を実現する。
IRDは2016年夏にはファーストライトを迎え、2017年から本格的なサーベイ観測を開始する予定である。この惑星探索では、すばる望遠鏡を2017年以降の5年間で170日の観測夜を使い、丁寧なサンプルセレクションで選んだ100個の晩期M型矮星をサーベイする計画である。1m/sの視線速度測定精度を達成できれば、種族合成シミュレーションを元にした惑星パラメータ分布とすばる望遠鏡の観測スケジュールなどを考慮した現実的な観測シミュレーションを用いて、惑星発見数の期待値を見積もると、サーベイ期間内に 1地球質量の惑星が30個程度、ハビタブルゾーンに位置する地球型惑星が10個発見できることがわかった。また、これらの惑星は軌道が主星に近いのでトランジット起こす可能性が高く、すばる望遠鏡や将来のTMT(30m望遠鏡)を用いたトランジットや直接撮像のフォローアップ観測によって惑星の特徴付けが可能なサンプルを提供できることも期待される。本公演では、観測計画とサーベイサンプル、装置製作の進捗状況を紹介し、ユニークなIRD惑星探索が可能とする新しいサイエンスと系外惑星研究に与えるインパクトについて議論する。