日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 104 (1F)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)、座長:野田 寛大(国立天文台)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)

14:30 〜 14:45

[PPS11-28] エンセラダスの内部熱構造:氷地殻の緩和状態からの示唆

*鎌田 俊一1Nimmo Francis2 (1.北海道大学 創成研究機構、2.カリフォルニア大学サンタクルーズ校)

キーワード:エンセラダス、氷衛星、粘弾性

土星の氷衛星エンセラダスの南極領域は極めて活動的な領域であり、カッシーニ探査機によって観測された膨大な発熱量は、未だ物理的・化学的に説明が付かない程大きなものである。この熱の起源を解き明かすためには、内部温度構造を制約することが重要である。本研究では、エンセラダスの内部温度構造について2つの時間スケールの観点から制約を試みる。エンセラダス南極領域では地下海は周囲よりも分厚くなっており、その分氷地殻は薄くなっていると考えられている。この地殻下端における「地形」は時間とともに粘性緩和すると考えられるが、この粘性緩和の時間スケールは地殻深部での温度構造に依存する。もし地殻下部が熱く粘性率が低い場合には同時間スケールは短く、局所的に分厚い地下海の維持は困難であろう。しかし粘性緩和により水平流動した分だけ融解するのであれば、局所的に分厚い海が維持されるであろう。したがって現在のエンセラダスの氷地殻下部においては、粘性緩和と融解の2つの時間スケールが拮抗していると考えられる。本研究では、氷地殻の厚さや総発熱量など様々なパラメータを変えた粘弾性変形計算を行い、これらの時間スケールの比較を行った。その結果、長寿命放射性核種の壊変による熱0.3 GW [Roberts & Nimmo, 2008]と潮汐加熱1.1 GW [Meyer & Wisdom, 2007] のみを考えた場合、粘弾性変形の時間スケールは融解の時間スケールも遙かに短くなることが分かった。また、両時間スケールが等しくなるためには上記の約10倍の発熱量が必要であることが分かった。このことは、現在エンセラダスの熱構造は定常状態になく、過去に蓄えられた熱を放出していることを示している。