日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)

17:15 〜 18:30

[PPS11-P02] ハレアカラT60望遠鏡のDIPOL-2を用いた系外惑星の観測と解析

*前田 東暁1坂野井 健1鍵谷 将人1 (1.東北大学大学院理学研究科惑星・プラズマ大気研究センター)

キーワード:系外惑星、偏光、観測、大気、散乱

我々は、ハワイ・ハレアカラの口径60cm望遠鏡と偏光観測装置DIPOL-2(a double image high precision polarimeter, Piirola_et., al 2014)を使い、系外惑星の偏光観測を2015年1月に開始した。主星を光源とし、惑星大気により散乱・反射されて観測者に届く光は、公転に伴い周期的な偏光の変化を生じる。観測者は、ほぼ無偏光の主星からの光と、直線偏光した惑星性大気からの散乱・反射光とを合わせた光を観測することとなる。その結果、最大で10^(-4)-(-5)の振幅を持つ周期的な直線偏光の変化が観測されると期待される。これらを検出できる精密な偏光測定を系外惑星の様々な公転位相角について実施することで、トランジット天体に限定することなく、惑星の軌道要素や、惑星の大気の情報を引き出すことも可能と考えられる。また、我々が用いた偏光観測装置DIPOL-2は、可視光の3つの波長帯(B,V, Rバンド)での同時測定が可能であり、系外惑星大気散乱の波長依存性を知ることが出来る。しかし、これまで実際に系外惑星の偏光観測に成功した例は1天体にとどまる(Berdyugina et al., 2008, 2011)。本研究では、系外惑星の偏光観測のメリットを踏まえ、観測と解析方法の確立を目指している。
系外惑星の偏光観測の容易さ、すなわち期待される直線偏光の変動の振幅は、主星と惑星の距離、および惑星の半径という2つの条件に主に依存する。加えて、S/N向上のためには、主星が明るいことが重要となる。既知のホットジュピターに分類される系外惑星において、期待される偏光度の振幅を検討したところ、10^(-5)以上の精度での偏光測定が必要であると考えられる。この精度の実現には、望遠鏡と偏光観測装置の固有の偏光(機器偏光)を校正し、その時間安定性を必要な測定精度の範囲に収めることが不可欠である。
我々は、まず観測装置の直線偏光の基準方向を決定するために、既知の直線偏光天体(HD204827,HD25443)を観測し、ストークスパラメータの基準軸を決定した。また、機器偏光を決定するために、2015年1月、5月、8月、10月にそれぞれ19個、12個、18個、10個、合計59個の無偏光標準星の観測を実施した。その結果、十分な追尾機能を備えていなかった2015年1月の観測データを除く、40個の無偏光標準星についてストークスパラメータを求め、機器偏光を10^(-5)の精度で決定した。また、これらの観測と並行して、既知の系外惑星を含む3天体(tau_boo b, HD189733 b, 55Cnc e)の観測もおこなった。系外惑星の偏光状態については、観測値から機器偏光を差し引くことで求めることができる。またこれら観測対象とした系外惑星は、短期間に異なる公転位相角でのデータが収集できることから、公転周期が既知(数日)であるホットジュピター型の系外惑星を選定した。今後は同様の系外惑星においてデータを増やすと同時に、異なる種類の系外惑星についても観測をおこなうことを検討している。今回の発表では、これらの機器偏光の校正結果、既知の系外惑星の偏光度推定手法、および、観測した3つの系外惑星大気偏光観測の解析と結果について発表する。