日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)

17:15 〜 18:30

[PPS11-P04] BepiColombo 日欧共同水星探査ミッション

*早川 基1前島 宏則1 (1.独立行政法人宇宙航空研究開発機構)

キーワード:水星、惑星探査、国際協力

紀元前から知られる水星は、「太陽に近い灼熱環境」と「軌道投入に要する多大な燃料」から周回探査は困難であり、2011年3月からの米国MESSENGERによる観測が初めてのものである。MESSENGERの探査から、この小さな惑星の表面には従来考えられていたものをはるかに超える量の揮発性物質が存在し、惑星磁場も双極子の中心が惑星半径の2割も北にずれているなど予想外の発見をもたらしたが、その究明は未だこれからの課題となっている。「ベピ・コロンボ(BepiColombo)」は、欧州宇宙機関(以下、ESA)との国際分担・協力によりこの惑星の磁場、磁気圏、内部、表層を初めて多角的・総合的に観測しようとするプロジェクトである。固有磁場と磁気圏を持つ地球型惑星は地球と水星だけで、初の水星の詳細探査=「初の惑星磁場・磁気圏の詳細比較」は、「惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性」 の知見に大きな飛躍をもたらす。また、磁場の存在と関係すると見られる巨大な中心核など水星の特異な内部・表層の全球観測は、太陽系形成、特に「地球型惑星の起源と進化」の解明に貢献する。
本計画は、観測目標に最適化された2つの周回探査機、すなわち表面・内部の観測に最適化された「水星表面探査機(MPO)」(3軸制御、低高度極軌道)、磁場・磁気圏の観測に最適化された「水星磁気圏探査機(MMO)」(スピン制御、楕円極軌道)から構成される。ISAS/JAXA は、日本の得意分野である磁場・磁気圏の観測を主目標とするMMO 探査機の開発と水星周回軌道における運用を担当し、ESA が残りの全て、すなわち、打ち上げから惑星間空間の巡航、水星周回軌道への投入、MPO の開発と運用を担当する。
両探査機に搭載する数々の科学観測装置は、2004年の搭載機器選定以降開発は着々と進行し、日本側の詳細設計審査は平成23年11月に終了した。JAXAの開発するMMOは昨年3月に総合試験が終了し、4月にESA/ESTECへと輸送した。単体の作業を12月に終了し、ESA側製作のモジュールと組合わせた環境試験の開始を待っているところである。環境試験終了後、各モジュールは射場である仏領ギアナへ輸送され、2017年に打ち上げの予定である。一方MMO電気モデルはドイツへ輸送され2012年10月から電気モデル試験に参加した。今後第2回電気モデル試験に参加する予定である。
水星到着後の観測は、選ばれた装置開発チームに留まらず、広く日欧研究者で構成する「BepiColombo 科学ワーキングチーム」(年1回程度開催)で立案・実施される。本講演では、初の大型日欧協力となったBepiColomboプロジェクトに関してのこれまで、今後についての状況を報告する。