17:15 〜 18:30
[PPS11-P12] タイタン表面における液体メタンの安定性
土星の衛星タイタンは、表面に液体メタンが確認されている唯一の天体である。この表面環境は、タイタンが保持する厚い大気の温度分布のために形成されている。本研究では、太陽光フラックスや重力加速度など、大気に関係するパラメータと表面液体メタンの存在範囲の関係を推定することで、タイタン表面環境の安定性評価を試みた。
こうしたパラメータ変更や他の天体との比較は、天体の状態は形成時からの進化に依存し、潮汐加熱などの外的要因も影響するため、一般には時間変化を含んだものとなる。しかしタイタンや他の氷天体の場合、大気や内部の形成過程について複数の説が存在し、評価が容易ではない。タイタン大気については、アルゴンの同位体比などから主成分である窒素はアンモニアの光分解に由来するとされているものの、その生成過程・時期・生成量については定説が得られていない状況である。そこで、現在のタイタンの状態を基準として定常状態でのパラメータ変更を考えた。
本研究ではモデルとして、放射と対流を用いた一次元平行平板灰色大気モデル(Robinson et al., 2012)を用いた。ただし対流についてはメタンの凝結を考慮した。
タイタンの大気では、メタンなど気体分子の赤外吸収と、成層圏に多く分布する、メタンの光分解で生成される有機物エアロゾルの可視光吸収が放射に影響する。この可視光吸収による表面温度低下は逆温室効果(Antigreenhouse effect)とも呼ばれる。赤外吸収はメタン濃度による吸収係数の変化を考慮し、暴走温室効果を定常状態での閾値として表現できるようにした(Nakajima et al., 1992を参考)。可視光吸収については、入射可視光の量や成層圏でのメタン濃度、エアロゾルの光学特性などで吸収される割合が変化する可能性が考えられるが、一次元の近似では正確な表現は困難である。そこで今回は、吸収される割合が現在の値から変化しない場合などを単純に仮定した。
このモデルにおいて、表面の温度と窒素・メタンの分圧および重力加速度を設定し、対応する太陽光フラックスを算出してパラメータ変更を行った。
太陽光フラックスが小さい領域では、表面温度が低くメタンの凝結が起きるため、表面液体が存在するための下限値が得られた。一方で太陽光フラックスが大きい領域において、逆温室効果に対して温室効果の寄与が大きすぎる場合には、暴走温室効果により上限値が得られた。こうした液体の存在範囲を規定する太陽光フラックスの値に関して、表面窒素分圧は下限値のみに影響し、重力加速度は上限値と下限値の両方に影響した。
可視光のうち、吸収される割合が変化しない場合を仮定したところ、表面窒素分圧・重力加速度の大きさによらず上限値が存在した。また、現在の太陽光フラックスが下限値となる表面窒素分圧と重力加速度は、それぞれ 1.06×106 Pa, 0.15 m/s2 という値となった。
こうしたパラメータ変更や他の天体との比較は、天体の状態は形成時からの進化に依存し、潮汐加熱などの外的要因も影響するため、一般には時間変化を含んだものとなる。しかしタイタンや他の氷天体の場合、大気や内部の形成過程について複数の説が存在し、評価が容易ではない。タイタン大気については、アルゴンの同位体比などから主成分である窒素はアンモニアの光分解に由来するとされているものの、その生成過程・時期・生成量については定説が得られていない状況である。そこで、現在のタイタンの状態を基準として定常状態でのパラメータ変更を考えた。
本研究ではモデルとして、放射と対流を用いた一次元平行平板灰色大気モデル(Robinson et al., 2012)を用いた。ただし対流についてはメタンの凝結を考慮した。
タイタンの大気では、メタンなど気体分子の赤外吸収と、成層圏に多く分布する、メタンの光分解で生成される有機物エアロゾルの可視光吸収が放射に影響する。この可視光吸収による表面温度低下は逆温室効果(Antigreenhouse effect)とも呼ばれる。赤外吸収はメタン濃度による吸収係数の変化を考慮し、暴走温室効果を定常状態での閾値として表現できるようにした(Nakajima et al., 1992を参考)。可視光吸収については、入射可視光の量や成層圏でのメタン濃度、エアロゾルの光学特性などで吸収される割合が変化する可能性が考えられるが、一次元の近似では正確な表現は困難である。そこで今回は、吸収される割合が現在の値から変化しない場合などを単純に仮定した。
このモデルにおいて、表面の温度と窒素・メタンの分圧および重力加速度を設定し、対応する太陽光フラックスを算出してパラメータ変更を行った。
太陽光フラックスが小さい領域では、表面温度が低くメタンの凝結が起きるため、表面液体が存在するための下限値が得られた。一方で太陽光フラックスが大きい領域において、逆温室効果に対して温室効果の寄与が大きすぎる場合には、暴走温室効果により上限値が得られた。こうした液体の存在範囲を規定する太陽光フラックスの値に関して、表面窒素分圧は下限値のみに影響し、重力加速度は上限値と下限値の両方に影響した。
可視光のうち、吸収される割合が変化しない場合を仮定したところ、表面窒素分圧・重力加速度の大きさによらず上限値が存在した。また、現在の太陽光フラックスが下限値となる表面窒素分圧と重力加速度は、それぞれ 1.06×106 Pa, 0.15 m/s2 という値となった。