日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)

17:15 〜 18:30

[PPS11-P24] ガス抵抗による微惑星捕獲

*末次 竜1大槻 圭史1 (1.神戸大学大学院理学研究科)

キーワード:惑星、衛星、微惑星

巨大惑星の周りには数多くの衛星があり、これらは規則衛星と不規則衛星に分類できる。規則衛星は惑星近傍でほぼ円軌道で公転していることから、周惑星円盤内で固体が集積することで形成されたと考えられている。一方、不規則衛星の軌道は楕円で、逆行方向に公転しているものもあるため、捕獲された微惑星が起源だと考えられている。
近年、周惑星円盤への固体物質の供給過程が詳しく調べられた。その結果、従来の規則衛星の形成モデルでは考慮されていなかった微惑星も、周惑星円盤通過時のガス抵抗によって捕獲され、円盤に衛星の材料物質として供給されうることが明らかになった(Fujita et al. 2013, Tanigawa et al. 2014)。先行研究では周惑星円盤の散逸過程は考慮していなかったが、実際には原始惑星系円盤の散逸やギャップ形成によるガス供給の減少によって散逸したと考えられる。こうした惑星形成終了直前でのガス密度の低い周惑星円盤によって捕獲された微惑星が不規則衛星になった可能性がある(Cuk & Burns 2004)。しかしながら、弱いガス抵抗による微惑星捕獲過程は不明な点が多い。そこで本研究では、軌道計算を用いて周惑星円盤の散逸過程を考慮した微惑星の捕獲について調べた。
ガス抵抗が弱い場合、微惑星は一回の近接遭遇で大きくエネルギー失いを捕獲されるのではなく、惑星周りを一時的に公転している間に次第にエネルギーを失い、捕獲されることが明らかとなった。こうした捕獲は微惑星の惑星周りの公転方向が順行でも逆行の場合でも起こる。また周惑星円盤の散逸の効果を考慮した場合、円盤の散逸時間が長いほどガス抵抗を受けている時間が長いため、離心率や軌道傾斜角が小さくなる傾向があることがわかった。不規則衛星の軌道要素と比較した場合、順行の不規則衛星の軌道長半径の分布と数値計算結果は合ったが、逆行の場合は観測値よりも小さな軌道長半径をもつものが大半であった。そのため、三体相互作用といった他の捕獲過程が必要だと考えられる。
一方、火星の規則衛星の起源についても火星の原始大気からのガス抵抗による微惑星捕獲が寄与した可能性がある。そこで球対称のガスによる微惑星の捕獲及び軌道進化についても調べた。その結果、球対称の大気からのガス抵抗による捕獲の場合でも、周惑星円盤の場合と同様の一時捕獲を経由した捕獲過程によって、微惑星が捕獲されうることを明らかにした。