日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS11] 惑星科学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鎌田 俊一(北海道大学 創成研究機構)

17:15 〜 18:30

[PPS11-P28] 原始惑星系円盤での鉛直方向拡散によるダストアグリゲイトの焼結

*児玉 季里子1城野 信一1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:原始惑星系円盤、ダストアグリゲイト、焼結、乱流、拡散

原始惑星系円盤はガスとダスト微粒子で構成されている.ダスト微粒子の付着成長が惑星形成の第一ステップであるので,ダスト微粒子が付着成長できるか否かを知ることは重要である.ダスト微粒子には氷ダストと岩石ダストがある.本研究では氷ダスト微粒子に注目する.氷ダストアグリゲイトは加熱されると焼結する.焼結とは表面積が小さくなる方向に物質が移動する現象である.氷ダストアグリゲイトが焼結するとダストのつなぎ目のネックが焼結により成長する.焼結したダストアグリゲイトは衝突すると跳ね返り成長できなくなるので,焼結の進行が惑星形成に影響する.
原始惑星系円盤では,熱源は中心星の可視光照射である.赤道面付近のダスト微粒子によって照射は遮られるため,円盤表面のダスト微粒子のみ加熱される.そのため乱流によって氷ダストアグリゲイトが高温の円盤表面付近に輸送されると,焼結が進む可能性がある.
Sirono, (2011, ApJ, 735, 131)では赤道面の温度分布から焼結に必要なタイムスケールが示されている.しかし,氷ダストアグリゲイトが鉛直方向に運動している場合での焼結タイムスケールはまだ研究されていない.そこで本研究では,数値シミュレーションによりダストアグリゲイトの鉛直方向の運動を算出し,焼結に必要なタイムスケールを求めた.
ダストアグリゲイトの鉛直方向の運動は乱流による拡散と,中心星の重力による沈降の2つである.この拡散と沈降を数値シミュレーションで再現することで,各ダストアグリゲイトの運動を算出する.焼結は温度に強く依存しているため(Sirono, 2011, ApJ, 735, 131),氷ダストアグリゲイトは高温の領域に行くと,付着成長に影響するまで焼結する.数値シミュレーションで高温になる高さ以上を経験した焼結したダストアグリゲイトの割合を算出し,そこから焼結タイムスケールを得る.
一定時間が経つと,ダストアグリゲイトの分布は定常状態になる.定常状態になるまでのタイムスケールは沈降タイムスケールで決まる.分布が定常状態でも,各ダストアグリゲイトは円盤内の鉛直方向を上下に動き,高温になる高さまでいくと焼結する.そのため,焼結したダストアグリゲイトの比は時間とともに増加する.この結果をフィッティングすると,1-exp(-t/b)でよく近似できることがわかった.ここでtは時間でbは焼結タイムスケールである.焼結タイムスケールは高温になる高さが減少するにつれ短くなる.また,焼結タイムスケールは拡散タイムスケールで決まり,ダストアグリゲイトのサイズには依存せず,乱流の強さのみに依存することがわかった.一方で,円盤表面の高温領域までの距離はダストアグリゲイトのサイズに依存している.成長によりダストアグリゲイトが沈殿すると,高温領域までの距離は短くなる.そのため,ダストアグリゲイトがあるサイズまで成長すると,鉛直方向拡散による焼結が起こる.ここから焼結によってダストアグリゲイトの成長が阻害されることが期待される.