10:00 〜 10:15
[PPS12-05] 複数回加熱により成長したType A CAIの岩石学的研究
キーワード:CAIs、希土類元素、岩石学的研究
カルシウムとアルミニウムに富んだ難揮発性包有物(CAIs)は初期太陽系において、最古の固体物質であり、238U/235U比を補正したPb-Pb年代を用いて約4567万年という形成年代を示す(e.g., [1])。粗粒CAIはその岩石学や平均化学組成からtype A, type B, type Cに分類される[2]。すべてのタイプのCAIsは一度以上部分的に溶融している(e.g.,[3,4,5])が、部分的な溶融による結晶分別作用を考慮した岩石学や同位体組織学をふまえたAl-Mg年代測定法などの局所年代測定の報告例は限られている[5]。本研究では、LA-ICP-MSを用いた広領域の微量元素マッピングと岩石学的研究を用いて部分溶融による領域を特定し、今後の局所年代学を展開する事を目指している。主要元素マッピングの測定には京都大学設置のFE-SEM-EDS(JSM-7001F と X-max 150)を用い、微量元素マッピングの測定には京都大学設置のLA-ICP-MS (NWR193 Laser Ablation system and iCAP Q ICP-MS)を用いた。
KU-N-01と名付けられた8 mm×6 mmの大型の完全に円形の形を残したCAIはNWA7865隕石から発見された。約80%はメリライトで構成されており、岩石学的にtype A CAIに分類される。けれども、KU-N-01の化学組成はStolperの相図上において[6]、type A とtype Bの中間の値を示す。これは、このCAIがtype B CAIに対応するファッサイトとスピネルに富んだ領域を持つためであると考えられる。さらに、コアにはÅk 20-30のメリライトが脈状のÅk 30-40のメリライトに取り囲まれていることからも説明ができる。
希土類元素を含む微量元素マッピングをLA-ICP-MSによって取得した。層状のマントルリム構造のような明瞭な部分溶融をしたと思われる領域を分析領域として選択した。この領域はファッサイトとÅk20からÅk70のゾーニングを持ったメリライトとÅk15-20のメリライトの結晶とWark and Lovering rim(W-L rim)に取り囲まれたゲーレナイトマントルを含んでいる。希土類元素のマップから、Euを除いた希土類元素(La, Ce, Nd, Sm, Yb, Lu)はファッサイトに富んでおり、一方でEuは欠乏していた。対照的に、Euを除く希土類元素はゾーニングを持つメリライトに欠乏しており、Euは濃集している。Åk15-20のメリライトにはすべての希土類元素が濃集している。ゲーレナイトマントルにはリバースゾーニングがあり、W-L rimは希土類元素が他の領域に比べ濃集している。
これらの結果から、希土類元素はEuを除いて、結晶ではなくメルトの濃集しやすいため、ファッサイトとゾーニングをもったメリライトは部分的に溶融したメルトから同時期に晶出し、Åk15-20のメリライトは溶け残ったと示唆される。また、リバースゾーニングを持ったゲーレナイトマントルは凝縮によって形成されたことと[7]、W-L rimの希土類元素パターンはグループⅡに所属することから[8]、ゲーレナイトマントルとW-L rimは凝縮でできたと示唆される。このように、希土類元素の広領域マッピングを通して、CAI形成プロセスにおける部分溶融の検証を新たな視点から展開する。
謝辞:本研究を進めるにあたり、土`山教授の研究室にはFE-SEM-EDSの使用を、平田教授の研究室にはLA-ICP-MSの使用をさせていただいたことを心より感謝いたします。
[1] Connelly et al. (2012) Science, 338, 651-655. [2] Grossman (1975) GCA, 39, 433-454. [3] Yurimoto et al. (1998) Science, 282, 1874-1877. [4] MacPherson and Davis (1993) GCA, 57, 231-243. [5] Kawasaki et al. (2015) GCA, 169, 99–114. [6] Stolper (1982) GCA, 46, 2159–2180. [7] MacPherson and Grossman (1984) GCA, 48:29-46 [8] Nagasawa et al. GCA, 41.11 (1977): 1587-1600.
KU-N-01と名付けられた8 mm×6 mmの大型の完全に円形の形を残したCAIはNWA7865隕石から発見された。約80%はメリライトで構成されており、岩石学的にtype A CAIに分類される。けれども、KU-N-01の化学組成はStolperの相図上において[6]、type A とtype Bの中間の値を示す。これは、このCAIがtype B CAIに対応するファッサイトとスピネルに富んだ領域を持つためであると考えられる。さらに、コアにはÅk 20-30のメリライトが脈状のÅk 30-40のメリライトに取り囲まれていることからも説明ができる。
希土類元素を含む微量元素マッピングをLA-ICP-MSによって取得した。層状のマントルリム構造のような明瞭な部分溶融をしたと思われる領域を分析領域として選択した。この領域はファッサイトとÅk20からÅk70のゾーニングを持ったメリライトとÅk15-20のメリライトの結晶とWark and Lovering rim(W-L rim)に取り囲まれたゲーレナイトマントルを含んでいる。希土類元素のマップから、Euを除いた希土類元素(La, Ce, Nd, Sm, Yb, Lu)はファッサイトに富んでおり、一方でEuは欠乏していた。対照的に、Euを除く希土類元素はゾーニングを持つメリライトに欠乏しており、Euは濃集している。Åk15-20のメリライトにはすべての希土類元素が濃集している。ゲーレナイトマントルにはリバースゾーニングがあり、W-L rimは希土類元素が他の領域に比べ濃集している。
これらの結果から、希土類元素はEuを除いて、結晶ではなくメルトの濃集しやすいため、ファッサイトとゾーニングをもったメリライトは部分的に溶融したメルトから同時期に晶出し、Åk15-20のメリライトは溶け残ったと示唆される。また、リバースゾーニングを持ったゲーレナイトマントルは凝縮によって形成されたことと[7]、W-L rimの希土類元素パターンはグループⅡに所属することから[8]、ゲーレナイトマントルとW-L rimは凝縮でできたと示唆される。このように、希土類元素の広領域マッピングを通して、CAI形成プロセスにおける部分溶融の検証を新たな視点から展開する。
謝辞:本研究を進めるにあたり、土`山教授の研究室にはFE-SEM-EDSの使用を、平田教授の研究室にはLA-ICP-MSの使用をさせていただいたことを心より感謝いたします。
[1] Connelly et al. (2012) Science, 338, 651-655. [2] Grossman (1975) GCA, 39, 433-454. [3] Yurimoto et al. (1998) Science, 282, 1874-1877. [4] MacPherson and Davis (1993) GCA, 57, 231-243. [5] Kawasaki et al. (2015) GCA, 169, 99–114. [6] Stolper (1982) GCA, 46, 2159–2180. [7] MacPherson and Grossman (1984) GCA, 48:29-46 [8] Nagasawa et al. GCA, 41.11 (1977): 1587-1600.