15:30 〜 15:45
[PPS12-19] 火星のレオロジー構造の進化
★招待講演
キーワード:火星、レオロジー構造、進化
火星は地球と同じく主に岩石と金属から成る地球型惑星である。しかし、現在の火星には液体の水や生命は存在せず、そして地球において定常的な物質循環を支配するプレートテクトニクスが火星では働いていないことが分かっている[e.g., Solomatov and Moresi 1997]。これらのことから火星は地球と異なる進化の道を辿ってきたことが予想される。このような惑星の進化やテクトニクスを考察する際、重要な要因の一つとして、レオロジー構造が挙げられる。レオロジー構造は惑星内部の変形機構や強度を表わす。岩石レオロジーは温度や水、組成に強く依存するため、惑星内部に強いレオロジーの層構造を形成する[e.g., Burgamann and Dresen, 2008]。このレオロジー層構造が惑星のテクトニクス、対流様式を支配し、結果として惑星の進化に大きな影響を及ぼす。本研究では、熱史と水のリザーバーの進化を考慮した火星のレオロジー構造の時間進化を考察することが目的である。
レオロジー構造は温度や水に敏感である。本研究ではまず火星内部の温度構造を決定した。今回は比較的浅い部分(<100 km)に焦点を当て、熱生産(heat production)[Hahn et al., 2011]や、熱流量(heat flow)[Ruiz et al., 2011]を用いた熱伝導方程式と、放射性元素の濃度から、North Pole(低地)そしてSolis Planum(高地)における10億年ごとの温度構造を決定した。
この温度構造を基に、斜長石(地殻)[Rybacki and Dresen 2000; Azuma et al., 2014]と、かんらん石(マントル) [Karato and Jung, 2003; Katayama and Karato, 2008]の流動則を用いてレオロジー構造を決定した。過去の先行研究では、火星の塑性変形領域の岩石強度はpower-law creepの流動則から考察されているが[e.g., Grott and Bruer, 2008]、比較的温度が低く、応力の高い領域(<1000°C, >~400 MPa)では、Peierls mechanismが岩石のレオロジーを支配することが指摘されている[Tsenn and Carter, 1987]。本研究では、power-law creepだけでなく、このPeierls mechanism とdiffusion creepも考慮する。そして脆性破壊領域についてもByerlee’s lawだけでなく[Byerlee, 1978]、粘土鉱物のような低い摩擦係数を持つ物質と水の効果も考慮に入れ[Morrow et al., 2000; Kubo and Katayama, 2015]、より正確なレオロジー構造を計算した。この計算されたレオロジー構造から、火星におけるそれぞれの時代のリソスフェアの強度を決定し、火星のレオロジー構造の進化について考察を行った。
本研究で計算されたレオロジー構造において、火星のモホ付近での変形はpower-law creepではなくPeierls mechanismが支配的であることがわかった。これはpower-law creepで予測された火星のリソスフェアの強度は過大評価されている可能性を示す。そして、どの時代においてもドライな条件よりウェットな条件のほうが、惑星のリソスフェアの厚さは小さく、強度が低くなることと、ドライな条件とウェットな条件ではリソスフェアの発達の速さにも大きな差が生まれる可能性が示された。さらに、最近の研究では、火星隕石の水素同位体比から、火星の水は40億年前にそのほとんどが失われた可能性が示されている[Kurokawa et al., 2014]。この水の進化も考慮に入れると、40億年前に火星のリソスフェアの強度は著しく高くなり、プレート境界の発達やプレートの運動、沈み込みは非常に難しい環境へと遷移したことが予想される。
レオロジー構造は温度や水に敏感である。本研究ではまず火星内部の温度構造を決定した。今回は比較的浅い部分(<100 km)に焦点を当て、熱生産(heat production)[Hahn et al., 2011]や、熱流量(heat flow)[Ruiz et al., 2011]を用いた熱伝導方程式と、放射性元素の濃度から、North Pole(低地)そしてSolis Planum(高地)における10億年ごとの温度構造を決定した。
この温度構造を基に、斜長石(地殻)[Rybacki and Dresen 2000; Azuma et al., 2014]と、かんらん石(マントル) [Karato and Jung, 2003; Katayama and Karato, 2008]の流動則を用いてレオロジー構造を決定した。過去の先行研究では、火星の塑性変形領域の岩石強度はpower-law creepの流動則から考察されているが[e.g., Grott and Bruer, 2008]、比較的温度が低く、応力の高い領域(<1000°C, >~400 MPa)では、Peierls mechanismが岩石のレオロジーを支配することが指摘されている[Tsenn and Carter, 1987]。本研究では、power-law creepだけでなく、このPeierls mechanism とdiffusion creepも考慮する。そして脆性破壊領域についてもByerlee’s lawだけでなく[Byerlee, 1978]、粘土鉱物のような低い摩擦係数を持つ物質と水の効果も考慮に入れ[Morrow et al., 2000; Kubo and Katayama, 2015]、より正確なレオロジー構造を計算した。この計算されたレオロジー構造から、火星におけるそれぞれの時代のリソスフェアの強度を決定し、火星のレオロジー構造の進化について考察を行った。
本研究で計算されたレオロジー構造において、火星のモホ付近での変形はpower-law creepではなくPeierls mechanismが支配的であることがわかった。これはpower-law creepで予測された火星のリソスフェアの強度は過大評価されている可能性を示す。そして、どの時代においてもドライな条件よりウェットな条件のほうが、惑星のリソスフェアの厚さは小さく、強度が低くなることと、ドライな条件とウェットな条件ではリソスフェアの発達の速さにも大きな差が生まれる可能性が示された。さらに、最近の研究では、火星隕石の水素同位体比から、火星の水は40億年前にそのほとんどが失われた可能性が示されている[Kurokawa et al., 2014]。この水の進化も考慮に入れると、40億年前に火星のリソスフェアの強度は著しく高くなり、プレート境界の発達やプレートの運動、沈み込みは非常に難しい環境へと遷移したことが予想される。