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[PPS12-P10] 炭素質コンドライト中の六角板状をした方解石負晶および抜け殻結晶様空隙について
キーワード:炭素質コンドライト、方解石、負晶
CI、CM、CRコンドライトなどの水質変成を受けた炭素質コンドライト中には、水質変成作用により生じた方解石などの炭酸塩鉱物が見られる。FIB(集束イオンビーム)装置と放射光X線マイクロCTを組み合わせることにより、このような鉱物中から流体包有物を見出そうとする研究が行われている[1]。このような研究において、外形が不定形の方解石中に六角板状の形状をもつ負晶や、マトリクスの物質中に六角板状の抜け殻結晶様の空隙が見出された。方解石は多様な結晶形状をもつことが知られており、六角板状の形状を示すものは比較的稀である。方解石の結晶形状は生成時の温度やCO2の分圧を反映すると考えられ[2]、負晶などの形状から水質変成の環境を知る手がかりとなる可能性がある。本研究では、このような六角板状を示す負晶や抜け殻結晶様空隙について、結晶学的な考察をもとにした形状についての詳細な研究を行うとともに、比較のため六角板状などの結晶外形をもつ地球上の方解石中の負晶形状についても調べた。
炭素質コンドライトとしてSutter’s Mill隕石(CM)およびIvuna隕石(CI)を、また比較のため神岡鉱山産の六角板状(約40×20 mm、厚さ約5 mm)および鋲頭状(約20×20 mm、厚さ約5 mm)の方解石単結晶を試料として用いた。Sutter’s Mill隕石中の方解石結晶(約40 mm)、Ivuna隕石中のマトリクス中のNa, Mg, Si, S, Oに富む不定形物質(約40 mm)を、方解石単結晶についてはc軸に平行な薄片において光学顕微鏡で流体包有物を含む部分を選んだ。薄片からFIBにより箱型または円筒形にサンプル(約20~30 mm)を切り出し、SPring-8のBL47XUにおいて結像型吸収X線CT装置を用いて、約150 nmの実効空間分解能において3次元CT像を得た。これらのCT像から、2値化により空隙や流体包有物を画像解析により抽出した。得られた3次元形状は、表面をポリゴンで近似し、その法線ベクトルのステレオ投影を行い結晶面の同定を試みた。また、方解石単結晶サンプルについてはSEM/EBSDにより結晶学的方位を求め、流体包有物外形と比較した。
Sutter’s Mill隕石の方解石粒子は放射光X線回折から単結晶であることがわかった。この中に、ファセットをもつ2つの空隙すなわち負晶(約2 mm)が見られた。そのひとつは六角板状の形状をもち、最も発達した六角形の面を(001)面と仮定して指数付けしたところ、天然で見られる六角板状の結晶((001)および(104)面からなる)とは異なる結晶面組み合わせをもつことが分かった。また、もうひとつの負晶は六角板状には見えないが、六角板状のものと類似した結晶面組み合わせをもつことが分かった。一方、この方解石粒子内には微細な包有物(<1mm)が多数みられ、(001)と推定した面に平行にバンド状に分布している。従って、母結晶が(001)面を成長面として包有物を取り込みながら成長し、微細な包有物分布による累帯構造をつくるとともに、(001)面の発達した比較的大きな負晶をつくったと考えれる。
Ivuna隕石のNa, Mg, Si, S, Oに富む不定形物質中には、複数の六角板状の空隙(約3 mm)が見出された。これについても、最も発達した六角形の面を(001)面と仮定して指数付けしたところ、Sutter’s Mill隕石の方解石負晶とは異なり、(001)面と(100)面の組み合わせで説明できることが分かった。また、その形状から6回回転対称または3回回反対称の区別はできず、方解石構造をもつ炭酸塩だけでなく、磁硫鉄鉱のような鉱物の抜け殻結晶である可能性も否定できなかった。
神岡鉱山産方解石中の負晶は様々な方向の面状に分布していることからヒールドクラックであると考えられる。その形状は母結晶の形状(六角板状および鋲頭状)とは異なっていた。六角板状の結晶は、(001)面と(104)面の組み合わせからなるが、その負晶(約20 mm)では(104)面のみが発達し、(001)面は見られなかった。一方、鋲頭状の結晶は(018)面からなるが、その負晶(約5 mm)では(1-12)面が発達していた。ヒールドクラック内の負晶は、その発達過程において溶解・再結晶作用により長時間経過すると表面自由エネルギーの小さな結晶面が発達するようになる。六角板状結晶中の負晶では表面自由エネルギーの高い(001)面は、一度出現しても消滅したかあるいは最初から存在していなかったと考えらえる。一方、Sutter’s Mill隕石の方解石負晶は、結晶成長時に生成されてから溶解・再結晶作用による形状変化をほとんど受けてなかったものと考えられる。
[1] Tsuchiyama et al. 2014, MAPS, 49: A404. [2] Krasnova & Petrov 1997, Genesis of mineral individuals and aggregates. Nevsky kuryer, St.-Petersburg.
炭素質コンドライトとしてSutter’s Mill隕石(CM)およびIvuna隕石(CI)を、また比較のため神岡鉱山産の六角板状(約40×20 mm、厚さ約5 mm)および鋲頭状(約20×20 mm、厚さ約5 mm)の方解石単結晶を試料として用いた。Sutter’s Mill隕石中の方解石結晶(約40 mm)、Ivuna隕石中のマトリクス中のNa, Mg, Si, S, Oに富む不定形物質(約40 mm)を、方解石単結晶についてはc軸に平行な薄片において光学顕微鏡で流体包有物を含む部分を選んだ。薄片からFIBにより箱型または円筒形にサンプル(約20~30 mm)を切り出し、SPring-8のBL47XUにおいて結像型吸収X線CT装置を用いて、約150 nmの実効空間分解能において3次元CT像を得た。これらのCT像から、2値化により空隙や流体包有物を画像解析により抽出した。得られた3次元形状は、表面をポリゴンで近似し、その法線ベクトルのステレオ投影を行い結晶面の同定を試みた。また、方解石単結晶サンプルについてはSEM/EBSDにより結晶学的方位を求め、流体包有物外形と比較した。
Sutter’s Mill隕石の方解石粒子は放射光X線回折から単結晶であることがわかった。この中に、ファセットをもつ2つの空隙すなわち負晶(約2 mm)が見られた。そのひとつは六角板状の形状をもち、最も発達した六角形の面を(001)面と仮定して指数付けしたところ、天然で見られる六角板状の結晶((001)および(104)面からなる)とは異なる結晶面組み合わせをもつことが分かった。また、もうひとつの負晶は六角板状には見えないが、六角板状のものと類似した結晶面組み合わせをもつことが分かった。一方、この方解石粒子内には微細な包有物(<1mm)が多数みられ、(001)と推定した面に平行にバンド状に分布している。従って、母結晶が(001)面を成長面として包有物を取り込みながら成長し、微細な包有物分布による累帯構造をつくるとともに、(001)面の発達した比較的大きな負晶をつくったと考えれる。
Ivuna隕石のNa, Mg, Si, S, Oに富む不定形物質中には、複数の六角板状の空隙(約3 mm)が見出された。これについても、最も発達した六角形の面を(001)面と仮定して指数付けしたところ、Sutter’s Mill隕石の方解石負晶とは異なり、(001)面と(100)面の組み合わせで説明できることが分かった。また、その形状から6回回転対称または3回回反対称の区別はできず、方解石構造をもつ炭酸塩だけでなく、磁硫鉄鉱のような鉱物の抜け殻結晶である可能性も否定できなかった。
神岡鉱山産方解石中の負晶は様々な方向の面状に分布していることからヒールドクラックであると考えられる。その形状は母結晶の形状(六角板状および鋲頭状)とは異なっていた。六角板状の結晶は、(001)面と(104)面の組み合わせからなるが、その負晶(約20 mm)では(104)面のみが発達し、(001)面は見られなかった。一方、鋲頭状の結晶は(018)面からなるが、その負晶(約5 mm)では(1-12)面が発達していた。ヒールドクラック内の負晶は、その発達過程において溶解・再結晶作用により長時間経過すると表面自由エネルギーの小さな結晶面が発達するようになる。六角板状結晶中の負晶では表面自由エネルギーの高い(001)面は、一度出現しても消滅したかあるいは最初から存在していなかったと考えらえる。一方、Sutter’s Mill隕石の方解石負晶は、結晶成長時に生成されてから溶解・再結晶作用による形状変化をほとんど受けてなかったものと考えられる。
[1] Tsuchiyama et al. 2014, MAPS, 49: A404. [2] Krasnova & Petrov 1997, Genesis of mineral individuals and aggregates. Nevsky kuryer, St.-Petersburg.