日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG20] Intermediate-depth and deep earthquakes

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 201A (2F)

コンビーナ:*久家 慶子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室)、北 佐枝子(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、Schubnel Alexandre(CNRS)、Abers Geoffrey(Cornell University, Department of Earth and Atmospheric Sciences, New York, USA)、座長:Schubnel Alexandre(CNRS)、原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)

[SCG20-08] Dehydration of lawsonite in blueschist could directly trigger intermediate-depth earthquakes in subducting oceanic crust

★招待講演

*岡崎 啓史1ハース グレッグ1 (1.Department of Earth, Environmental & Planetary Sciences, Brown University)

キーワード:lawsonite, dehydration embrittlement, intermediate-depth earthquake

沈み込むスラブ内で発生しているやや深発地震の発生頻度、震源分布には沈み込み帯ごとの地域性が確認されている。例えば、冷たい沈み込み帯である東北日本ではスラブ中の海洋地殻内とマントル内に相当する部分で発生し、二重深発地震面を形成している。一方、暖かい沈み込み帯である西南日本では震源は主にモホ面もしくはそれ以深のマントルに集中し、地震面は一重のみである。Kita et al. (2006, GRL)やAbers et al. (2013, EPSL) は、冷たい沈み込み帯の海洋地殻中にのみ存在すると考えられる低温高圧で安定な含水鉱物であるローソナイトの脱水反応が二重深発地震面の上面で起こっている地震と密接に関わっている可能性があることを指摘している。
本研究ではローソナイトと比較検証物質としてアンチゴライト蛇紋石を、Griggs型固体圧試験機を用いて高圧下(~1 GPa)で変形させた。変形中に温度を上昇させることによって脱水反応を促進させ、脱水時のローソナイトの力学挙動とサンプル中の微小な破壊によって励起されるアコースティックエミッション(AE)の発生頻度を同時観測した。蛇紋石は脱水反応に伴い応力が減少するものの地震性すべりもAEも観測されなかったのに対し、ローソナイトは脱水反応が進むに従いAEを伴いながら応力が急激に減少し地震性すべりを引き起こすことが明らかになった。回収試料からはひずみが断層沿い(R1面及びB面)に局所化して形成された鏡肌が観察された。ローソナイトの実験ではひずみ速度と温度増加速度にかかわらず、すべての実験条件で不安定すべりの間の応力降下の勾配は試験機の剛性に従った。実験に対する非時間依存熱機械学的スケール係数(温度上昇速度/歪み速度)は自然の沈み込み帯に対する見積もりの範囲内で、自然に存在するローソナイトに富む片岩層内で不安定摩擦すべりが起きる可能性があることを示している。以上より、ローソナイトの存在とその脱水反応が東北日本など冷たい沈み込み帯において二重深発地震面の上面を形成している可能性が高い。一方で、蛇紋石の実験では応力降下の速さが熱機械学的スケールに支配されることがわかった。天然においてもこのスケールの違いが蛇紋岩断層中で様々なすべり挙動(例えば地震、スロー地震、クリープなど)を引き起こしているのかもしれない。