日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 流体と沈み込み帯のダイナミクス

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 A08 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、川本 竜彦(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、中島 淳一(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:畑 真紀(産業技術総合研究所)、中谷 貴之(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学科)

15:00 〜 15:15

[SCG57-06] かんらん石の交代作用時に発達する双方向の反応進行フロント:メッシュ組織形成過程への示唆

*大柳 良介1岡本 敦1土屋 範芳1 (1.東北大学大学院環境科学研究科)

キーワード:蛇紋岩化作用、物質移動、置換反応、交代作用、水熱実験

蛇紋岩化作用は元素移動,表面反応及び体積膨張を伴う複合プロセスであり,マントルの化学的・物理的特性を大きく変化させる.海洋底の蛇紋岩化したかんらん岩には,しばしばメッシュ組織と呼ばれる産状が観察される.メッシュ組織はリムとコアで構成鉱物が異なることが多く,メッシュリムは蛇紋石に過飽和な流体が外部から流れてきて析出した(Andreani et al., 2004; Andreani et al., 2007),もしくは最初に形成したコアが後のステージに流れてきた流体によって置換されてリムが生成した(Beard et al., 2009; Schwarzenbach et al., 2016)といった解釈がなされているが,メッシュの形成過程やそれに伴う体積変化や物質移動を,天然組織から読み解くことは難しい.
本研究では,かんらん石と斜長石の鉱物粉末を用いた水熱実験により,かんらん石と斜長石の境界から離れた箇所では蛇紋石+ブルース石+磁鉄鉱が生成する一方で,境界から約1.5mm内において,SiやAlの交代作用の進行とともに特徴的な組成累帯構造をもったAlに富む蛇紋石(Al蛇紋石)の集合体を生成させることを見いだした.Al蛇紋石のAl量は,コアからリムへかけて一旦減少し再び上昇する傾向をとる.Alの量が低い累帯構造の中心付近では,明瞭な境界が観察される.この明瞭な輪郭は元のかんらん石の外形を示し,反応フロントが元のかんらん石の内側と外側に進行していると解釈される.Al蛇紋石が組成累帯構造を示すのは,かんらん石の交代作用フロントの進行に伴い,反応する流体のSi,Al濃度が時々刻々と変化しているためだと考えられる.かんらん石内部への内側への反応は, Mg, Fe及びSiが除かれる蛇紋石化であり,そのMg, Fe及びSiが空隙まで輸送されて外部から供給されたSiと反応して外側の蛇紋石部分が成長することを見出した.
本実験は鉱物粉末を用いており約40%の初期空隙率をもつ.そのため本研究の知見はき裂の多いかんらん岩の蛇紋岩化作用へ適用することができると考えられる.メッシュリムとメッシュコアは別のステージで生成したと解釈されることが多いが,本研究の結果は,反応が内側にだけ進行する等体積の変化は大きな元素移動を必要とし,反応が内側に進行してメッシュコアをつくると同時に外側へも進行しメッシュリムをつくる.つまり,メッシュコアとメッシュリムが同ステージで形成しうることを示唆する.この際,メッシュコアが元のかんらん石の外径を保存し,ジャッキアップのようなメカニズムで全体が膨張してメッシュリムが太くなった可能性を示唆する.