日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG59] 海洋底地球科学

2016年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 301B (3F)

コンビーナ:*沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、石塚 治(産業技術総合研究所活断層火山研究部門)、土岐 知弘(琉球大学理学部)、高橋 成実(海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)、座長:山本 揚二朗(海洋研究開発機構)、山下 幹也(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)

15:30 〜 15:45

[SCG59-07] 海底間音響測距を用いたトルコ・マルマラ海下北アナトリア断層のすべりレート検出及び断層モデルの推定

*山本 龍典1木戸 元之2太田 雄策1高橋 成実3山本 揚二朗3Dogan Kalafat4Ali Pinar4Sinan Ozeren5金田 義行6 (1.東北大学大学院理学研究科、2.東北大学災害科学国際研究所、3.海洋研究開発機構、4.ボアズィチ大学、5.イスタンブール工科大学、6.名古屋大学減災連携研究センター)

キーワード:海底間音響測距、北アナトリア断層、GNSS、断層モデル、海底測地

北アナトリア断層 (NAF) は,トルコ北部を東西約1200 kmに走る右横ずれ断層で,大局的な相対速度は約20 mm/yrである.最近100年では,断層破壊が東から西へ進み,直近では,1999年にIzmitとDuzce (それぞれイスタンブールの東100 km, 200 km) でそれぞれM7.4, M7.2の地震が発生した.NAFはイスタンブールの南に位置するマルマラ海下で地震の空白域となっている.しかし,海底であることからGNSS等の衛星を利用した測地観測が困難で,断層のひずみ速度や断層構造の推定がされていない.そこで我々は,マルマラ海下のNAFで,海底測地観測の一つである海底間音響測距を実施し,ひずみの蓄積状況を推定した.
海底間音響測距は,断層間の相対速度を検出する手段として用いられており,約1 kmの基線長変化をミリメートルオーダーの精度で検出できる.本観測では2014年9月に,海底間音響測距装置5台を断層を挟むように設置した.各装置は6時間毎に機器間で音波の送受信を行い,往復走時を記録した.また,測距と同時に,音速補正に必要な温度と圧力,及び機器の傾きを補正するための姿勢も計測している.収録した測距データ等は随時船上から音響通信で吸い上げられる.
本講演では,2014年9月の観測開始から,2015年7月までの約10ヶ月のデータを紹介する.音速補正に用いる温度データは全機器で分解能の限界 (0.001℃) に近い僅かな変動 (~0.007℃) が見られただけなので,これを多項式近似した滑らかな変化を適用した.圧力データは観測期間途中より欠測となったので,データが存在する期間のみ使用し,それ以降は圧力補正をしていない.このことにより,見かけ基線長にばらつきは残るものの,ひずみレートそのものの推定には影響しなかった.音速補正を適用した見かけ基線長変化に姿勢補正を施し,さらに断層と基線のなす角から横ずれ成分を計算すると,4-8 mm/yrとなった.1 kmに満たない短基線でそれだけのひずみレートが維持できるとは考え難いため,この領域では約20 mm/yrのブロックの相対運動のうち, 4-8 mm/yrを地殻浅部のクリープで解消していると解釈した.本講演では更に,陸域のGNSS観測データも加えて考察した断層固着深度推定モデルも紹介する予定である.

謝辞:本観測は,JICA/JST支援のもとSATREPSで実施されているMarDiMプロジェクトで行われました.