日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG59] 海洋底地球科学

2016年5月26日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、石塚 治(産業技術総合研究所活断層火山研究部門)、土岐 知弘(琉球大学理学部)、高橋 成実(海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)

15:30 〜 16:45

[SCG59-P04] 西フィリピン海盆の拡大史に関する再考察

*松本 剛1 (1.琉球大学理学部)

キーワード:西フィリピン海盆、地磁気異常

西フィリピン海盆(WPB)はフィリピン海プレートの西端部に位置し、その拡大はCentral Basin Spreading Cenre (CBSC)から始まり、33Ma頃停止したとされている(Karig, 1975, Seno and Maruyama, 1984, Hilde and Lee, 1984など)。最近報告されたIshizuka et al. (2013)では、ODPサイトの岩石試料をもとにした年代からも、この拡大史が検証されている。一方、WPBの北西部にはガグア海嶺(Gagua Ridge, GR)、ルソン・沖縄断裂帯(Luzon-Okinawa Fracture Zone, LOFZ)が位置する。この周辺の拡大史が不詳であったが、Doo et al. (2015)により、この海域での近年の海洋地球物理学調査に基づく地磁気異常値をもとにした海底の年代がまとめられ、GRとLOFZとの間の海盆が53-41Maの間拡大し、その後GRの西側の海盆、すなわちHuatung Basin(HB)と台湾の間の海域が拡大を開始して、33Ma頃まで拡大していたと云う結果が得られている。すなわち、後者は前者を挟んで、CBSCでの拡大とほぼ同時期に拡大していたことになる。しかしながら、CBSCの北端の位置から見て、CBSCでの拡大は、ホットスポット性の火山活動により形成された(Ishizuka et al. 2013)とされるBenham Rise(BR)及びUrdaneta Plateau(UP)の南側の海域は明らかではあるものの、WPBの北縁に当たる南西諸島海域との間、LOFZの東側の領域での拡大に時期については明らかにされておらず、CBSCの拡大が停止した時期以降も拡大していた可能性もある。そこで本研究では、これまでのこの海域での近年の地球物理探査航海のデータを見直し、この海域を含むWPB全体の拡大史の再考察を試みた。使用したデータは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)のによる、「かいれい」KR03-04、KR04-14航海、「みらい」MR11-01航海、海上保安庁海洋情報部による水路測量HT97航海による地磁気データ(全磁力異常、一部、三成分磁力計による測定をもとにした全磁力異常計算値を含む)である。結果として、この海域の海底は北東に向かう程年代が古くなり、その年代は23~30Maと見積もることができた。このことは、海底での採取試料の年代決定値(新城, 私信)ともほぼ一致している。すなわち、CBSCでの拡大が停止して、新たに東側に隣接する四国海盆・パレスベラ海盆の拡大が開始した当時、WPBの北端部でも新たなマグマ活動が生起し、拡大軸が転移したものと推定できる。しかしながら、この海域で拡大が停止した時期については、隣接するマニラ海溝への沈み込みもあり、推定することは難しい。