日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG60] 地殻流体と地殻変動

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、梅田 浩司(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、松本 則夫(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)

17:15 〜 18:30

[SCG60-P02] 滋賀県湖西地域の地下水と地殻変動・降雨との関係

*小泉 尚嗣1 (1.滋賀県立大学環境科学部)

キーワード:琵琶湖、地殻変動、降水、地下水、新潟神戸歪集中帯

琵琶湖に流入する水の2割程度が地下水と言われていて,その主要部分を湖西地域の地下水が占めると考えられている.湖西地域には山地が多く,その山地に降った降水が湖西地域の豊かな地下水を形成している.熊谷ら(2015)は,潜水ロボットによって,2008年12月に琵琶湖西部の最深部付近で湧水とガスの噴出口(ベント)を発見し,2010年12月時点で,ベントが認められる地域が拡大していることを見いだした.彼らは,ベントの拡大と地殻変動との関係を示唆している.実際,琵琶湖付近は,新潟-神戸歪集中帯に属し,年間で10のマイナス7乗程度の大きな縮みが,少なくとも最近数十年は続いてきている.しかし,その比率が2010年頃に変化したという報告はない.国土地理院の提供する電子基準点の日々の座標値のデータを用いて,琵琶湖を東西に挟む基線である彦根-高島間の距離が,1996年以降,上述の比率でほぼ一定に縮んでいることが確認できた.他方,琵琶湖周辺の平均的な降水量が,2010年以降増加していることが見いだされた.また,湖西の山間部にある産業技術総合研究所の花折地下水観測点でも,2010年以降に地下水圧が増加している.したがって,2010年頃に琵琶湖周辺の降水量が増加した結果,湖西地域山地内での地下水圧が上昇して琵琶湖への地下水流入量が増加した可能性がある.もし,それが正しければ,増加した地下水はベントが認められる地域を拡大させ得るだろう. 発表においては,琵琶湖周辺における降水・地下水圧・地殻変動の相互関係について述べる予定である.
参考文献
熊谷道夫・浜端悦治・奥田昇,2015,琵琶湖は呼吸する,海鳴社.180pp.