[S-CG60] 地殻流体と地殻変動

[SCG60-P06] 重力変化を説明できるTRIES・MIU周辺の地下水流動モデル-その２

*本多 亮¹、柳澤 孝一²、大久保 慎人³、田中 俊行¹ (1.公益財団法人 地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所、2.国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、3.高知大学教育研究部自然科学系理学部門)

キーワード：重力、地下水、地震応答

東濃地震科学研究所（TRIES）では2003年より継続的に研究所周辺3観測点での絶対重力測定を繰り返し行っており，2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う重力変化を捉えた．3観測点ともに観測された10μGal程度の重力減少は地殻変動による影響を考慮しても大きく，同時に近傍で観測された14mに及ぶ水位上昇とは逆センスの変動であった．我々はこの重力変化を説明するための地下水流動モデルの構築を進めてきた．これまでに周辺地域の水理地質構造を考慮した重力変化シミュレーションを行い大枠での水の流動は表層から深層への移動であるらしいことを明らかにした．一方でTRIESに隣接する瑞浪深地層研究所（MIU）でも周辺地域に幾つかの水位（水圧）観測井を所有しており，Niwa et al.,（2012）では東北地方太平洋沖地震の際にそれらの井戸で観測された地震時水位変化について報告している．
本報告ではまずTRIES/MIU周辺で観測された重力データについて，新たに地震後5年間の地殻変動（余効変動）の影響を考慮した．地震時の隆起は1 cm未満であり重力変化に影響しないことは既に確認されていた．余効変動はこの5年余りで4 cm程度の隆起を示しており，これによる重力効果は9μGal程度の減少となる．地震時地下水応答はこの５年でほぼ回復傾向にあり，それにもかかわらず一見地震後のままの値を示し続ける重力値は余効変動によるものであると考えられる．また，地震時地下水応答についてNiwa et al. (2012) で報告されたものも含めてTRIES/MIU周辺の水位観測結果それぞれについて詳しく調べ，それぞれの井戸で観測された水位変化について変位量，変位ピークまでの時間，その後の回復の様子等について整理し傾向を調べた．特に水位回復と帯水層であると考えられる基盤面上の集水域面積との間に相関性が確認できた．また，複数のパッカーにより水圧観測をしている井戸で地震時に深層へ水が移動した様子が見られるかどうかも調べた．